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バイクには、それこそたくさんの魅力がある
しかしながら、ここまでわかりやすい
アピールに満ちたバイクはない
VMAX。スタイルの魅力、加速の魅力……
20年間バリバリの現役である
この“カリスマ”バイクの歴史をひもといてみよう |
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ヤマハのロングセラーモデルのなかで、ひときはのド迫力。独特の存在感を漂わせた優れたデザインに対する評価でも一級のものがある。まさにヤマハオリジナルの代表作のひとつだ。デビュー(当時は輸出専用車)は1985年のことだから、はや20周年。
その間、若干の仕様変更や熟成。ホイールデザインのリファインが何度か重ねられてきている。しかし基本フォルムは、デビュー当初そのままのデザインがソックリと踏襲され続けている事実には改めて立派だと思う。
開発のコンセプトはズバリ、ドラックスター・レプリカだったと記憶している。つまりゼロ発進加速での速さを競い合うアリカンなモータースポーツに参加する競技車両をほうふつとさせる。そんなダイナミズムを柱としたアメリカンクルージングモデルだ。
同時期にカワサキからエリミネーターが登場。偶然とは思えないほど共通の香りを漂わすライバルが出現したことにも驚かされたものだが、トータルデザインのまとまり具合とド迫力。そして独自のタンクレイアウトをはじめとするメカニズムの斬新性でも、VーMAXは大きな注目を集め、新たなビッグバイクカテゴリーのひとつとして人気を得た。
時代背景としてはレーサーレプリカブームまっただなか。究極の500ccモデルが登場したり、4ストローク車も過激にエスカレート。一方、ヤマハセローの登場も同じ年だ。
VーMAXは輸出車ということもあって、国内では縁遠い存在ではあったが、先に登場しているカワサキNinjaとともに、逆車人気に拍車をかけ、国内での販売実績も侮れないものとなり、現在までのロングセラーへと続いている。
当初のモデルはVブーストと呼ばれる装置を搭載。6000回転から開き始めるバルブは8500回転で全開となり、気筒当たりツインキャブに変化して多量の燃焼ガスを積極導入する仕組み。実際にも6500回転あたりから豹変する強烈な吹け上がりは、当時量産車世界最大の145馬力を実感させるに十分なものがあった。
新型車のほとんどすべてを日本自動車研究所谷田部テストコースで動力性能試験を実施してした記者にとっても、どとうの加速Gとアッという間にオーバー200km/hの世界に到達する底力に驚かせれたのを今でもハッキリと覚えている。
ただ、当初のモデルは254kgの車重と世界イチのV4パワーを支えるには車体がやや軟弱で、直進安定性がいまひとつ。トップギヤでエンジンが完全に伸びきるまで最高速テストを続けられなかったのも事実。もちろんその後、改善されたことはいうまでもない。
小さなダミータンク。前を向いて大きく口を開けたエアクリーナーダクト。巨大に見える黒いV型4気筒の1198ccエンジン。当時は極太に思えた150/90Vー15インチサイズのリヤタイヤ。それらのすべてが、それまでにない迫力とビッグバイクならではの独自の存在感を発揮していたのだ。
直接的には関係ない話かもしれないが、久々にヤマハオリジナルの傑作デザインを表現してくれたMTー01の登場は、VーMAXの成功に培われていると考えても、あながち間違いではないと思う。
それほど、ヤマハのVーMAXは、2輪車という乗り物のデザインとユーザーにもたらされる価値と魅力に新鮮な息吹を与え続けていると思うのだ。それに対するマーケットでの評価が、現在まで続くロングセラーモデルへと帰結させた。普遍の価値と魅力を備えるモデルは、必ずヒットしバイク史に名を残すという、よい見本のようなモデルなのだ。 |
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