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バイクのスタンダードとして、もはや当たり前な存在。 普遍的な格好よさでまとめられたオーセンティックなフォルムを有し、 柔軟かつ懐深い乗り味は、ビギナーからベテランまでを魅了する。 そんなミドルネイキッドたちの今を振り返ってみよう |
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バイクのスタンダードとして、もはや当たり前な存在。
普遍的な格好よさでまとめられたオーセンティックなフォルムを有し、
柔軟かつ懐深い乗り味は、ビギナーからベテランまでを魅了する。
そんなミドルネイキッドたちの今を振り返ってみよう |
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今からおよそ20年ほど前の話。バイクシーンにはレーサーレプリカ旋風が吹き荒れていた。格好も性能も競技用のレーシングマシンをほうふつとさせるタイプが流行。年々進化の速度を早め、サーキットを攻め込む本物のレーサーに極めて近いキャラクターがもてはやされていた。
ブームはヒートアップし、レース人口に急激な増加傾向をみせたり、鈴鹿8時間耐久レースには20万人を超える観客動員を数えた。街なかでもレザースーツを着用して走る姿が珍しくなかったのだから、当時のバイクに対する熱中度にはすさまじいものがあったのだ。
レプリカモデルに漂うエキサイティングなムードとスポーツ性に、多くのバイクファンたちが酔いしれた時代といえるだろう。
しかし、どんな事柄にでもいえることだが、過激にエスカレートしたブームは、そうそういつまでも長続きするものではない。早いサイクルのモデルチェジで愛車はすぐに旧型になるし、新車価格も高騰の一途をたどり、レプリカ熱は一気に冷めることになった。
そして1989年にカワサキから登場した「ゼファー」が新たなムーブメントを呼び覚す。ボクの記憶が正しければゼファーとは偏西風から由来したネーミング。関西の明石に位置するカワサキが投入したそれが、新鮮な息吹を呼び覚ますミドルネイキッドブームの始まりとなったのだ。
当時リリースされていたバイクのほとんどはフェアリング装備が常識的だっただけに、それをはぎ取ってメカニズムがむき出しとなったフォルムは、とくに若いユーザーの眼にはとても新鮮に映った。逆にレプリカブーム以前のバイクシーンを知るユーザーにとっては懐かしさを覚えられたのが特徴。
そして何よりも高過ぎない価格。自由気ままで気軽に乗れる雰囲気。ライバルとの競争心をあおられないハートに優しい乗り味など。ビギナーライダーにも親しまれる穏やかさが好評を呼んだのだ。
ハッキリいって初代ゼファーの走行性能はけっして高く評価できるものではなかった。しかし、市場ではそれが大ヒット。本物の高性能追求に明け暮れたバイクメーカーは、新製品開発の目標を見失うことにもなる。
冷静に考えてみれば市場でのごく一般的なニーズにレプリカ系の性能はふさわしくない。それが主流とはなり得ないことが、だれの眼にも普通に理解されるようになった。普段街を走る自動車にフェラーリやポルシェが氾濫することなんてあり得ないことなのだ。
ゼファーは、ある種時代をさかのぼって開発された復刻版のようなモデル。フレームはスチールパイプ製だし、エンジンは空冷式。リヤショックもリンク機構を持たないベーシックな2本タイプ。レプリカ系とは大きな性能差があることは明白ながら、一般ユーザーがツーリングなどに使う実用上では、とくに大きな不足を覚えることはないし、だれでも楽に使える気軽な乗り心地のほうが魅力となる。
ただ日本の悪いところで、ネイキッドが売れるとなると、どのメーカーも基本的にほぼ右へならえの製品開発をし、各社それぞれの数世代前に存在していたスポーツモデルをベースとした雰囲気のモデルが次々に登場。現在のベストセラーであるCB400スーパーフォアや空冷ナンバーワンの走りを目指したXJR400R。スズキはインパルスの名を復活。カワサキはZRXを加えパイオニアのゼファーはχに進化しているのが現状だ。
今ではスタンダードなストリートスポーツとして定着したネイキッドだが、将来的には革新的なスタイリングへのトライが望まれている。高いレベルの商品力を備えた次代のネイキッドスポーツの登場に期待したい。 |
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