ここ10年ほどで、ビッグスクーターは車種もバリエーションもどんどん増え、今でもまだ百花繚乱と言える状況だ。そんな人気ジャンルを語る上で、決して外せないのが歴代のマジェスティだ。
初代モデルが登場したのは95年。当時、国内で販売されていた250クラスのスクーターといえば、ホンダのフリーウェイとフュージョンの2車種のみ。そこへヤマハから、投入されたのがマジェスティだった。
同じビッグスクーターでも、よりスポーティなスクーターとしてデビューしたマジェスティは、当初、今よりもっと大人向けのバイクとして見られていたと記憶する。たとえば夫婦や親子でタンデムツーリングを楽しむ、あるいは、バイタリティあふれる青年実業家がネクタイをなびかせながら市街地を疾走する……そんなイメージがまず浮かぶような存在だった。
ただ、間もなくそのイメージは一変する。一部のライダーが個性的な改造をはじめたのをきっかけに、マジェスティはカスタムベースとしての人気を急速に高めていったのである。むき出しのパイプハンドルに換え、スクリーンを短くカットし、車体を鮮やかなカラーにリペイントした程度でも、途端に、当時としては個性的な乗り物に変身した。
また質量のあるフルカバードのボディは、車高を下げてアメ車的な雰囲気に仕上げていってもしっくりときた。同時に、足を投げ出したようなラフな乗り方や、カジュアルな服装を許容したマジェスティは、オシャレに、またはカッコ良く乗るためのバイクとして若者から支持された。
つまり、今に続くビッグスクーター人気は、初代のマジェスティがきっかけだったと言っても過言ではない。さらに、言い替えれば、現在、幅広い層が愛用するビッグスクーターというジャンルを不動のものとした立役者の1台が、マジェスティなのである。
その後、初のフルモデルチェンジが99年に行なわれた。この二代目は、より貫録のあるスタイリングとなり、居住性も使い勝手も向上していた。この二代目には、ショートスクリー
ンを採用し、ハンドル、シートなどを変更したマジェスティCを02年から用意。これは若いユーザーの好みを反映してカスタム色を強めたバリエーションモデルだった。
現行のスタイルとなったのは、2度目のモデルチェンジが行なわれた07年から。愛嬌たっぷりのフロントマスクや、上端が水平にカットされたスクリーンもこのモデルならではの特徴。だが、それよりも私が注目したのは収納部へのアクセス方法だ。
ほかのビッグスクーターが、前後一体もしくはフロントのシートのみが前側に開くところ、現行マジェスティはシートのフロント側が前に、そしてリヤが後側に開くデュアルオープンシートとなっている。このデュアルオープンによって、60Lの大容量トランクへのアクセスが簡単になり、収納が便利に使えるようになったのである。
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