市販二輪車の歴史を振り返ってみても、400ccクラスの公道用国産オフロードモデルというのは、すごく機種が少ない。日本ではずっと昔から、中免(いまの普通二輪免許のことを昔はこう呼んだのだ)で乗れる最大排気量は400ccだったのだから、これを不思議に思う人もいるかも。でも国内仕様の場合、市販オフ車の中心排気量は、今も昔も250ccだ。
これには、車検の有無などロードモデルなどにも当てはまる理由もあるのだろうけど、オフ車の場合はそれ以外の理由として、「車体が重かったり大きかったりすると、転ぶリスクが増えるから」ということが上げられる。
たとえば林道なんかでは、岩や倒木などの障害物を越えたり、Uターンしたりする際に、バランスを崩してしまい、足を着いてバイクを力ずくで支えなければならなくなることもある。こんなとき、車重があったり車体が大きかったりすると……、すぐ転んじゃったりするのだ。
排気量が大きくなるということは、車重が増えて車体は大きくなるということだから、だったら車検もないし、250ccでいいだろうという考えが、ずっと定着しているんだと思う。
しかも日本の場合、海外のように広いオフロードを走れる環境もないから、オフ走行時にパワー不足を感じることも少ないし……。
でも、250ccという排気量は、オフロードではベストマッチな反面、アスファルトの上では若干物足りなく感じることも多い。とくに、高速道路や信号ダッシュのときなんかに、〝あとちょっとの余裕"が欲しくなるのだ。
実際問題、オフ車乗りだからって、年がら年中オフロードばかり走っているわけじゃない。というより、圧倒的に街や高速を走っている時間のほうが長い。もちろんオフでの扱いやすさは無視したくないけど、やっぱりアスファルトの上でもストレスがないほうが、いいに決まっているのだ。
だから、「400ccクラス唯一のオフローダー」として販売されてきたDR-Z400Sは、お世辞抜きにいいマシンだと思う。
車体は、さすがに250ccクラスよりひとまわり大柄だけど、車重は現行の250cc本格オフ車よりもちょっとだけ重いくらい。ギリギリ納得できるレベルの車格だ。そして、後で書くけど、とにかくバランスがいい!
それでいて、馬力やトルクは250ccクラスよりもグッとアップ。高速道路での巡航では余裕度が違うし、信号ダッシュでもストレスが少ない。しかも、あくまでも国内仕様だから、出力特性はマイルドで、とても扱いやすいのだ。
本当は、250ccの大きさのままパワー&トルクが400cc並みなら最高だけど、DR-Zは本当によく頑張っていると思う。
悩むのは、今回は試乗してないけど、各部が専用設計されたモタード仕様のSMが、これまたいいということ。街限定ならもちろんこっちなんだけど、さて……。
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