単気筒エンジンを70度と大きく前傾させて搭載した新型モタードマシンは、ケーヒンのインジェクションを採用するなど新しい試みが多い意欲作だ。
またがってみると、シート高があるにも関わらず、車体幅が狭く、車重が軽いため、つま先立ちでも不安は少ない。また車体を揺らしてみると、マスの集中化によりカタログ上の車量よりも軽く感じられる。
スターターを押しエンジンを目覚めさせ、スロットルをスナップすると、控え気味ながらも歯切れの良い低い排気音が耳に入る。そしていかにも“パワーがある”というゴリゴリとした振動がエンジン周りから伝わってくるが、ハンドルに到達する時には振動が小さくなっている。
はやる気持ちを抑えつつ試乗コースに入るも路面はウェット。濡れた路面では大排気量モタードマシンのもつ強大なパワーは扱いにくく、神経質な走りを要求されるだろうと予想した。だが、いざ乗ってみるとその考えは払拭された。
クラッチを繋ぐと、太いトルクのおかげで発進はとても楽。直線で少しラフにスロットルを開けてみれば、どこからでもエンジンの回転がしっかり付いてくる。それは完成度の高いインジェクションとマッピングのおかげ。開け始めのドン付きも皆無だ。そのためコーナーの立ち上がりもスムーズで、濡れている路面でも怖くない。マスが集中した車体は、コーナーリング中の車体の振りまわしを軽くし扱いやすくしている。
この軽快さゆえ、大排気量というのを忘れてしまうが、アクセルを多めに開ければ怒濤の加速をし、コーナー進入で一気にスロットルを戻せば、強烈なエンブレが発生する。それに合わせリヤブレーキを軽くあてるだけでスライドが十分可能だ。
フロントブレーキはコントロール性が高く雨でも安心。ウエット路面でここまで安定して走れるのだから、晴れた日ならさらなる走りが期待できる。
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