冒頭からこんなことをいうのも何だけれど、ヴェルシスX250ツアラーは、チョイ乗りではインパクトが感じづらい車両である。ゼロ発進のトルクは十二分とは言い難いし、ここぞという場面で右手に力を込めたときのレスポンスはいまひとつ。とはいえ今回の試乗で降雪路も含めて、さまざまな場面を走り込んだ僕は、長距離ツアラーという視点なら、これはこれでひとつの正解だと感じたのだ。
まずはエンジンに対する印象を述べると、悪条件下では低回転域の力不足が気にならず、むしろ控えめなトルクと穏やかなレスポンスがありがたく思えてくる。また、いい意味でオフ車的ではない、1980年代以前の旧車を思わせるゆったりしたライディングポジションは、親しみやすさと快適性を高次元で両立しているし、抜群の防風効果を発揮するスクリーン+フェアリング+ナックルガードのおかげで、高速巡航はかなり快適。さらにいうなら、乗り手を急かさないニュートラルなハンドリング、路面の凹凸を巧みに吸収する前後サスペンション、ツーリングペースなら25~30km/L前後をマークする燃費も好感触で、そのあたりを認識した僕は、今さらではあるけれど、ヴェルシスX250ツアラーの資質に感心したのである。
もっとも、短時間の試乗や一般的な日帰りツーリングでは、このバイクの本当の美点はなかなか理解しづらいだろう。とはいえ、数日以上のロングツーリングに頻繁に出かけるライダー、あるいは、日帰りでも500km以上の距離を日常的に走るライダーにとって、ヴェルシスX250ツアラーは理想の1台・・・になり得るモデルだと思う。
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