アドベンチャーツアラー界の異端児。それが既存のヴェルシス1000に対する僕の印象だった。いや、そもそもアルミツインスパーフレームに直列4気筒を搭載するこのモデルを、アドベンチャーと呼んでいいかどうかは微妙なところだが、少なくとも僕にとって既存のヴェルシス1000は、粗っぽさや難しさを感じる部分が多く、自信を持って万人に推奨したい車両ではなかったのである。
ところが、大幅刷新を受けた3代目に乗った僕は、その認識を改めることとなった。直列4気筒エンジンはしっとり滑らかで、いついかなるときも従順な反応を見せてくれるし、車体の安定感は超が付くほど絶大で、路面の凹凸の影響をほとんど受けないうえに、ハードブレーキングやラフなスロットル操作を余裕で受け付けてくれる。パワーユニット+フレームの基本構成は先代と共通なのに、まさかここまでの変貌を遂げているとは・・・。
もっとも今回試乗した車両が、多種多様なハイテク電子制御を標準装備する上級仕様のSEでなければ、そこまでの感動は抱かなかったかもしれない。でも近年の日本で販売されるアドベンチャーツアラーで、多種多様な電子制御が当たり前になっているという事実を考えれば、上級仕様を基準に考えることは間違いではないだろう。
約500kmに及んだ今回の試乗を終えた後、僕の頭に比較対象としてふと浮かんだのはBMWのR1250GSだった。ダート路面での走破性はさておき、ロングランでの楽しさと快適性なら、3代目ヴェルシス1000はこのジャンルの盟主に勝るとも劣らない資質を備えているのだ。
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