カワサキがひさびさにミドルクラスに投入したクルーザー、バルカンSは、日常の移動の道具として使えるだけなく、乗っていて楽しく、遠くにも脚を伸ばしたくなるバイクだった。
正直言って、最初に見たときは、「水冷並列2気筒のミドルクラスクルーザーなんて全然魅力的じゃない」と思ってしまった。でも乗っていると、そんなことは忘れる。人に何と思われようとも、こいつとなら楽しい時間を過ごせるという幸せな気分にさせられるのだ。
それにこの国内仕様車は、ライポジも日本人向きにピッタリ来るように、アレンジされている。ジャストフィットなのである。
跨れば、足着き性がすごく良く、車体の重心が低くて、停まっていても安定感が抜群だ。ゆっくり走り出しても、ハンドリングは素直で、適度な大らかさもある。低速でステアリングが切れ込んでくることもなく、気負うことはない。
そればかりか、エンジンは低回転域から太いトルクが出てきて、日常域で扱いやすい。極低速の粘りは抜群というほどではないが、不等間隔のビート感が心地良く響いてきて、いい気分だ。
加えて、ハンドリングがスポーティで、街中にある普通のコーナーさえも楽しめる。バンク角はアメリカンとしては大きめだから、ワインディングも気持ち良く流せる。
エンジンはベースとなったニンジャ650よりも、低中回転域が強化されたことで最高出力は10馬力ほど低められたが、スポーツしようとしても、それを不足に感じることはない。公道での現実的な使用に照準を合わせたバイクなのだ。
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