外装は全面新設計されているものの、XSR700の主要部品の大半は、'17年以前のMT-07用をほぼそのまま転用している。とはいえXSR700は、MT-07とは似て非なる魅力を備えているのだ。その魅力を作り出している主な要素は、座面が30mm高いシートとワイドなアップハンドルで、目線が高く、操作に対する反応が俊敏なXSR700には、スクランブラー的な資質が感じられる。もっともその一方で、MT-07の魅力だった抜群の親しみやすさは残念ながら薄らいでいるけれど、得るモノがあれば失うモノがあるのは当然なので、この点に関しては特に気にならなかった。
そして試乗してすぐXSR700が気に入った僕は、借用期間中に2度のツーリングに出かけてみた。そんな中で僕が好感を抱いたのは、MT-07と比較すると、積極的にコーナーを攻めたくなることや、周囲の景色がよく見えること、下半身の疲労が少ないことだった。また、乗り手を導いてくれるようなコーナリングの感触や、270度クランクの直列2気筒エンジンが発する心地いいパルス感と振動など、MT-07の美点が維持されていることには、何とも言えない安心感を抱いた。
というわけで、なかなか甲乙が付け難いXSR700とMT-07だが、あえて言うなら、親しみやすさと安定感ではMT-07、軽快感と開放感ならXSR700に軍配が上がると思う。ただし、スポーツとツーリングの両方が楽しめること、日本の道路事情に適した特性を備えていることは、両車に共通する要素だ。
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