フェアリングや足まわりに加えて、シリンダーヘッドや電子制御などが見直しを受けているものの、最高出力は先代とまったく同じ200PS。となると、YZF-R1が2020年型で行った仕様変更の主な目的は、既存の資質を維持しながら、ユーロ5規制に対応することなのだろうな。
当初の僕はそう感じていた。でも試乗中にパワーに勝るライバル勢、218PSのCBR1000RR-Rや214PSのパニガーレV4などと脳内比較を行ってみると、見劣りする気配がまったくない。それどころか、新型R1の運動性能は、ライバル勢と互角以上と思えるほどだったのだ。
その理由としては、先代より従順で滑らかなエンジンや、信頼感が増した足まわりが挙げられる。それらのおかげで新型R1は、歴代最高と言いたくなるほど融通が利くのである。さらに言うなら高速走行で感じる整流効果も、先代より格段に秀逸。そしてそのあたりを認識した僕は先代から継承した要素、スロットルの開けやすさに直結するクロスプレーンクランク(乗り手にとってノイズとなる慣性トルクを、ピストンの上下動で相殺)や、安定性以上に軽快性を重視したハンドリング(1405mmの軸間距離はクラス最短で、855mmのシート高はクラストップ)にも、改めて好感を抱くことになった。
もっとも、派手さや斬新さを求めるライダーにとっては、2015年型から基本構成が不変のR1は、いまひとつ購買欲がそそられないモデルかもしれない。とはいえ熟成度という見方をするなら、現代のリッタースーパースポーツのなかで、個人的にはR1が一番ではないかと思う。
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