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ここでは2013年モデルの中から、特に注目したいモデルにスポットを当ててみよう。 H・Dのモデルラインナップの中でも、ハイエンドのメーカー純正カスタムとして位置づけられているCVO。CVOとはCustom Vechicle Operationの略で、H・D開発陣が最高の技術でカスタムを施すプレミアムなラインとしてユーザーに認識されている。一切の妥協も許さないカスタムのため、これまでは非常に高額であったことも事実だが、今季発表されたFXSBSE CVOブレイクアウトは、300万円を切る価格帯で発売されるとあり、大きな話題となっている。 カスタムペイントという概念を純正モデルにいち早く取り入れたのはハーレー・ダビッドソンである。黒塗りの第一号車、後にサイレント・グレー・フェローと呼ばれる黎明期の車両、その後のオリーブと、年代によって様々なイメージカラーを打ち出してきたH・Dだが、1930年代半ばには、それまでの暗いイメージのカラーとは一線を画す鮮やかな車体カラーを採用。H・Dとしても豊富なカラーバリエーションをセールスの武器として販売していたのだ。初期ナックルに採用されたアール・デコ調のペイントはその最たるもので、いわばカスタムペイントはH・Dのお家芸と言っても過言ではない。 ここで紹介する48:フォーティー・エイト、72:セブンティー・トゥーは特にその色味の美しさで大ブレイク中のモデルである。タンクカラー以外は極力シンプルな外装としたボバーテイストの48、ホワイトリボンタイヤと適度なエイプバーを持つオールドスクールチョッパーテイストの72。明らかに目指すスタイルの異なる2台だが、その根底に流れているのは、H・Dの歴史そのものである。 長い歴史を持つからこそ、節目の年にはそれに相応しい車両をリリースする。これはH・Dではもはやセオリーとなっており、近年では105周年、100周年、と5年刻みで記念車が登場している。この記念車自体の歴史も古く、75周年を迎えた頃から、各ファミリーでスペシャルモデルが登場し、それらは後年になってもその多くがストックのスタイルを留めたまま、一部のマニアの間で取引されているのだ。 ビッグツインの中でもハーレーらしいチョッパースタイルが楽しめるダイナ・ストリートボブ。これも来年モデルの注目車として挙げておきたい。立体エンブレムが際立つ鮮やかなビッグブルーパールの車体色に、足周りやエンジンなど各部をブラックアウトした車体は、軽快さと重厚感が適度にバランスした効果を生む。 鮮やかなブルーと 価格◎174万円(ビッグブルーパール) l 『ハーレー・ダビッドソン』というジャンルが存在する理由 l ここまで駆け足でハーレー・ダビッドソンの110年の歴史を追ってきた。会社設立から今まで、一時的に外部経営陣が参画した時期はあるものの、一貫して創業家一族がカンパニーの中枢で陣頭指揮を執ってきた企業は、世界を見渡しても数えるほど。多くの企業は、良くも悪くも時代とともに近代的な企業体質となり、その過程で創業当時から大きく姿を変えることも少なくない。そうした意味では、生産設備などの近代化を進めつつも、古きよき45度Vツインを100年以上暖め続けたハーレー・ダビッドソンは、メーカーアイデンティティーの根幹部分では決して変わることのない『強さ』を持っている。この強さこそが彼らのブランド力であり、多くのライダーが心ひかれる所以である。 |
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