

SOHCとDOHCってどう違うの?
現代のスポーツバイクは、DOHC=ダブルオーバーヘッドカムシャフトが主流で、CBR、R25、ニンジャは、その慣例に従っている。そんな中で、GSXがSOHC=シングルオーバーヘッドカムシャフトを採用した理由は・・・ベーシックモデルにして開発ベースとなった、GSR250の構成を踏襲したからである。逆にGSXのエンジンが新規設計だったら、おそらく、スズキはSOHCを選ばなかっただろう。もっとも、DOHCがSOHCよりすべての面で優れているのかと言うと、必ずしもそんなことはない。操安性に影響を及ぼす重心の低さでは、エンジン上方で高速回転するカムの数は少ないほうが有利だし、重量や部品点数の削減という面でも、SOHCは優れた資質を備えているのだ。また、DOHCはそもそも高回転化を前提にした技術で、低中回転域重視のエンジンに必須ではないのである。余談だが、近年のホンダはオフ系各車やNC750シリーズなどに、あえてSOHCを採用している。
CBR250RR | Ninja250 | YZF-R25 | GSX250R | |
エンジン | 水冷4ストロークDOHC 4バルブ直列2気筒 |
水冷4ストロークDOHC 4バルブ直列2気筒 |
水冷4ストロークDOHC 4バルブ直列2気筒 |
水冷4ストロークSOHC 2バルブ直列2気筒 |
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総排気量 | 249cc | 248cc | 249cc | 248cc |
ボア×ストローク | 62.0mm×41.3mm | 62.0mm×41.2mm | 60.0mm×44.1mm | 53.5mm×55.2mm |
圧縮比 | 11.5 | 11.6 | 11.6 | 11.5 |
最高出力 | 28kW(38PS)/12500rpm | 27kW(37PS)/12500rpm | 26kW(35PS)/12000rpm | 18kW(24PS)/8000rpm |
最大トルク | 23N・m(2.3kgf・m)/11000rpm | 23N・m(2.3kgf・m)/10000rpm | 23N・m(2.3kgf・m)/10000rpm | 22N・m(2.2kgf・m)/6500rpm |
キャラクターを決定する内径×行程の寸法
エンジン特性を語るうえで最も重要な要素となるボア×ストロークには、スクエアストローク(ボアとストロークの比率が1)、ショートストローク(1以下)、ロングストローク(1以上)の3種が存在する。70年代以降に生まれたスポーツバイクは、高回転高出力化に適しているうえに、ピックアップに優れるショートストロークが圧倒的な多数派だが、近年の4輪の世界では、低中速トルクの確保が容易、燃費で有利という理由から、ロングストロークが主流になっている。ちなみに、かつての2ストスポーツバイクはスクエアストローク、あるいはニアスクエアと言うべき数値が一般的だった。
さて、この要素においてもGSX250Rは独創的で、他3車のショートストロークに対して、ロングストロークを採用している。その理由は動弁系と同じく、実用性重視のGSR250の基本設計をそのまま転用したからなのだが・・・。実はスズキは昔からロングストロークにこだわりを持っていて、かつての油冷GSX-R750では、88年型で70×48.7mmから73×44.7mmに変更した数値を、89年型以降は元に戻しているし、01〜16年に販売されたGSX-R1000シリーズは、同時代の他社製1000ccスーパースポーツと比較すると、明らかにロングストローク指向だったのである。