
DUCATI 851
- エンジン:90度V型2気筒 851cc
最高出力:74.5kW(102ps)/8,250rpm
乾燥重量:215kg
中古車平均価格:NO DATA - “打倒、日本製マルチ”を旗印に開発された、ドゥカティ市販車で初の水冷エンジン搭載車。空冷パンタ系エンジンがベースで排気量は851cc。後継モデルの888は、レースで大活躍した。

ツインは速い。そう言われても「ハイ、そうですか」と納得できるものではないだろう。では実例を上げよう。それが何かといえばレースである。レースの世界は、イコールコンディションが基本。戦闘力が拮抗したマシン同士でこそ、争いが成立して面白いレースが見られるというもの。そこで、ツインとマルチが真っ向勝負しているレースがある。それが、スーパーバイク世界選手権(以下、WSBK)だ。
WSBKは市販車改造マシンで争われるレースの世界選手権。つまり、ノーマル車両のポテンシャルがモノを言う。もちろん世界選手権だけあって、レベルは非常に高い。そのWSBKは1988年にシリーズが始まっているのだが、昨年までの26年間のうち、16年はツインエンジン搭載車がチャンピオンを獲得しているのだ。
WSBKが始まった当初、4気筒は750ccまで、ツインは1000ccまでと排気量が決められていた。250ccの排気量差を持たせれば、戦闘力は同等……の、ハズだったのだが、ハッキリいえばこれは誤り。そこまで排気量に差をつければ、明らかにツインが有利で、表彰台はツインが独占するような結果を生んでしまった。
時は90年代。当時のWSBKで猛威を奮っていたのはドゥカティ。市販車としては、ドゥカティ初の水冷Lツイン搭載の851系の発展モデル、888が3年連続でチャンピオンを獲得。次いで登場する名車916も圧倒的な強さを発揮。916に連なる996Rの世代まで、6回チャンピオンの栄冠に輝いている。この時代はツインの速さが注目を集め、国内外のメーカーから様々なスポーツツインが登場。高い注目を集めたのだ。
一方、日本のメーカーは4気筒エンジンのマシンで参戦していたが、ドゥカティの速さに全く歯が立たなかった。ホンダはその状況を打開するため、お家芸の4気筒を捨てV型2気筒エンジンを搭載するVTR1000SPをデビューさせ、ようやく同じ土俵に立てたのだ。VTR1000SPは2000年と2002年にチャンピオンを獲得している。
ツインが強過ぎたため、2003年からは、ツインもマルチも排気量1000ccに統一。なにしろ2002年までの15年間、マルチがチャンピオンを獲ったのはわずか4回だけだったのだから。ちなみに排気量が1000ccに統一されていた2003年から2007年の5年の間も、ドゥカティは3度チャンピオンを獲得。排気量が同じでも、ツインが速いことを証明し続けたのだ。
現在、WSBKでツインの排気量は1200cc。これは性能差を補うためではなく、ベース車の排気量が増えたドゥカティが参戦できるようにとられた措置。排気量が大きい分、改造範囲を狭めてイコールコンディション化されている。レースの世界でもツインの速さは認められているのだ。