2024/06/10 17:43:32 更新【充電不良】ドゥカティ モンスター1000 レギュレーター交換ドゥカティ モンスター1000S
走行中にバッテリーあがりの症状がでたドゥカティMonster1000Sieがレッカー車で緊急搬送されてきました。

走行中にエンジンが停止。 再始動を試みるもバッテリーあがりのような症状でセルモーターが回ってくれません。 路上でレッカーを手配しレッカー車が到着するまで数十分。 その後、再始動するとセルが弱々しいながらもまわり、エンジンが始動しました。 しかしすぐに停止。 以後はセルがまわらず再始動できなくなったということです。

バッテリーはしばらく放っておくと若干ながら電圧が回復することがあります。 おそらくレッカー車を待っている間に回復したものの、再始動した時点で残りの電力を使い果たし停止したのだと思います。

オートバイはゼネレーターで発電しており、その電気をバッテリーに送り込みます。 バッテリーから車両各部に電気が供給されます。 エンジンを制御するコンピュータであるECUやヘッドライトなどの電球類、セルモーター、そしてエンジンに発火するためのスパークプラグ等に電気が送られます。 従ってバッテリーあがり…バッテリーの電気がなくなればオートバイは動きません。 特にインジェクション車両は一定の電圧以下になるとエンジンを停止させるようになっています。

あがっていたバッテリーを充電し始動してみます。 エンジンが動き出せば車両の発電機…ゼネレーターが動き出しバッテリーを充電してくれます。 当然、始動中は充電されるので電圧が上昇するはずなのですが、まったく電圧はあがってきません。 それどころか徐々に電圧が低下します。 どうやらバッテリーが充電さていないようでう。 ゼネレーターの発電状況をチェックすると、きちんと発電はしています。 にもかかわらず、バッテリーは充電されていません。

ゼネレーターで発電される交流の電気はそのままでは使えないので直流に変換します。 更にゼネレーターはエンジンの回転数に応じて発電量が増えるのですが、高回転時には過大な発電をしますので、そのまま電気をバッテリーに送り込むと過充電となり、バッテリーを破損させます。 そこでこの直流への変換をする機能を持つレクチファイヤと、充電された電気を制御し必要な分だけをバッテリーに送り込むレギュレーターのふたつの機能を持つレギュレートレクチファイヤが発電機であるゼネレーターとバッテリーの間に介在しています。 このレギュレートレクチファイヤは通称レギュレーターと言われるもので、先のとおり交流から直流への返還と電気の制御をになっているわけですが、過大で不必要となる電気は熱に変換し放熱することによりバッテリーに送り込む電気の量を調整しているのです。

従ってエンジン始動中(発電中)は不必要な電気を放熱しつづけるため、レギュレーターには放熱のための空冷フィンが付いています。 できるだけ空気の流れのある場所に設置し放熱させる必要があります。 つまに熱に弱い部品なのです。 夏場にトラブルがとても多くなりますが、基本的には季節を問わずにトラブルが起きる可能性があります。 レギュレーターの下に何なら液状のものが流れているような痕跡が見えます。

レギュレーターはシリコンを使った半導体の電子部品です。 この半導体は熱により徐々に劣化し、最終的には寿命を迎えます。 つまりレギュレーターは消耗品なのです。 このトラブルを日本では故障と表現することが多いようですが、欧州では消耗品が寿命を迎えたと捉えるようです。 そのあたりはオートバイの文化的な違いによるものでしょうか。 実際、国産車はレギュレーターの交換に相当な手間がかかる車両が珍しくありません。 それに対し欧州車は比較的容易に交換ができるようになっています。 こちらのドゥカティMonsterも交換は容易です。 シートを外し、ボルトを2本外せば交換可能。 配線は簡単にカプラで脱着できます。


レギュレーターを外していると裏側の樹脂部分が溶けていました。 熱による影響だと思いますが、このように外観上で溶けてしまうのを見るのは稀です。 大抵は見た目は何も問題ないのに内部の半導体が寿命を迎えてトラブルを起こしているというのがほとんどです。 レギュレーターはダムの役割を果たします。 ゼネレーターで発電された電気を必要なぶんだけバッテリーに流すわけです。 トラブル発生時はこのダムが決壊し過充電を起こす場合と、逆にダムが閉じっぱなしになってバッテリーを充電してくれなくなる場合があります。 過充電を起越した際はすぐにそれに気づかないとバッテリーを破損させてしまいます。 それを防ぐためには電圧計などを設置するしかありません。 昔のオートバイだと電圧計を備えているものもあったのですが…

今回はダムが閉じっぱなし…つまりゼネレーターで発電はしていたものの、ダムが閉じっぱなしになってしまいバッテリーが充電されなくなっていたのが停止した原因です。 充電されなければバッテリーにためられている電気を使いきれば停止します。 これも気づきにくいですよね。 最近ではUSBでスマートフォンに電気を供給するアクセサリーソケットを装着する方が多くいらっしゃいますが、これに電圧計がセットになった商品があります。 当店でも人気の商品です。 このような電圧計でモニターしておくとトラブルを早期に発見できそうです。

レギュレーターを交換して電圧を測定すると、エンジン始動中のバッテリー電圧が上昇。 一定の電圧に達するとそれ以上あがらない…つまりきちんと制御されているのが確認できました。 先にも申し上げた通りレギュレーターは消耗品です。 但し、いつ寿命を迎えるかはハッキリわかりません。 乗りかた、走行距離、走行シチュエーションによって異なり、20年以上ノントラブルの方もいればこの5年で2度も交換しているという方も。 心配な方は早めに交換し、取り外したレギュレーターをツーリング等に持参できるスペアとしてお持ちになってはいかがでしょう?
対象車両情報
- メーカー・ブランド
- ドゥカティ