オイル交換で久しぶりにご入庫いただきましたアプリリアスポーツシティキューブです。

5年ほど前にご納車し、途中一度だけ電装系の故障で入庫しただけの車両でした。 日常的なメンテナンスはお近くのショップで行っていたということですが、オイル交換自体が1年半ぶりとのこと。 ご納車から約5年間で走行はわずか2600キロ。 確かに走行距離は少ないものの、定期整備は必要です。 確かにあまり乗っていなければオイルは汚れないでしょう。 ただ熱を加えられたオイルは確実に時間と共に劣化しています。 オイルフィルターはこの5年間で一度も交換していないとのこと。 納車前点検整備時に交換して以来、そのままのようです。 お近くのショップで交換したオイルの銘柄やグレードもおわかりにならないそうです。

エンジンオイルを抜く前にゲージでオイル量をチェックしますが入れ過ぎでした。 国産車などと異なるオイルゲージの使い方なので間違えたのでしょう。 心配だったのでエアフィルターを点検すると、エアフィルターケース内が吹き返しとブローバイガスのオイルミストで大変なことになっていました。 オイルの入れ過ぎには注意しましょう。 5年間ほとんどメンテナンスをしていないとことでブレーキフルードの交換も行います。

ブレーキフルードは吸湿性が高く、空気中の湿気をどんどん吸収します。 ブレーキホースとマスターシリンダー、ならびにマスターシリンダータンク（リザーバータンク）内のフルードに大気中の湿気が混入することは無いと勘違いしている方もしますが混入します。 ブレーキフルードタンクは密閉されていなからです。 つまり走行距離とは関係なく劣化しますので定期的な交換が必要です。

思ったよりは劣化していませんでしたが明らかに本来とは異なる色になっています。 本来は無色透明のフルードが茶褐色になっています。 フルードは沸点が高く設定されています。 ディスクブレーキと言うのは摩擦によって作動させるブレーキシステム。 作動中には摩擦熱が発生します。 この摩擦熱がブレーキホース内のフルードに伝達し沸騰するとフルード内に泡が発生します。 やかんでお湯を沸かすとお湯に気泡が発生しますよね？それと同じです。 こうなるとブレーキを効かせようとしても気泡が圧力を吸収し効かなくなります。 ベーパーロック現象ってやつですね。 空気が混入した状態をいわゆる「エア噛み」という状況です。

ブレーキフルードは通常の液体より高い沸点となっています。 一般的にオートバイで使うDOT4規格の場合、ドライ沸点（新品の状態）は230度以上です。 ウェット沸点（吸湿率3.7%…一般的に1~2年程使用したフルード）は155度以上。 このウェット沸点はクセモノで、使用環境によってかわります。 めちゃくちゃ乾燥した環境で車両を保管した場合と、湿気の多い場所での保管や雨天走行が多い場合とでは同じ時間でも吸湿率は変わります。 この吸湿率を確認するテスターもありますが、可能であればブレーキフルードは1年毎。 少なくとも2年毎（車検毎）に交換しましょう。 ちなみにミッツ・ハーではドライ沸点260度、ウェット沸点160度とDOT4規格を上回るブレーキフルードを使用しています。

無色透明の奇麗なフルードに交換。 もちろんタンク内だけでなく、キャリパー側からエアと共に吸い取って全てのフルードを交換します。

ブレーキフルードの交換後、再びエンジンオイル交換の作業に戻ります。 オイルフィルターを交換し、新しいオイルを入れれば作業終了。 使用するのはもちろんミッツ・ハー公式推奨エンジンオイルのルブロス。 Moto-SS 5W-50を投入します。 Moto-SSはミッツ・ハーで人気ナンバーワンの100％化学合成油。 高い性能を要求するピアジオクオーサーエンジンにはこのクラスのオイルが必要です。 スクーターは無段変速機を使用している構造上、エンジンは常に高回転が使用されます。 だからこそ、良いオイルを使うのがベターなのです。 特にクオーサーは高回転にギヤ比が設定されているパワフルなエンジンです。 低温時でもフリクションが少なく始動性が良好。 油温も上昇しやすく、それでいてある一定の温度以上には加熱されにくく強いせん断性能を持つ高性能オイル。 軽々と吹け上るエンジンや、非力なエンジンこそこのオイルの特徴がわかりやすく体験できるはずです。

作業終了後に自賠責保険を更新。 新たに5年ご加入いただきました。 もちろん今後は5年間そのままにせず、定期的に各部を点検整備していきましょう！ この度は誠にありがとうございました。