いまから10年前後落ちのリッターSSというのは、激動の時代に誕生したモデルということになる。言い換えれば4気筒SSのちょうど10年前は、ストリートからサーキットへの転換期でもあった。
今回、ユーザーからお借りした3台のうち、02〜03年型YZF-R1は、シリーズの3代目、そして公道でのスポーツ性を主題としたR1の最終型ということになる。04年型で、レースベース車としての役割を重視した大転換が施されるからだ。
やや気難しかった初代、150カ所もの変更で乗りやすさが増した00〜01年型の2代目から、02年型ではさらに刷新。乾燥重量は当時のR1000や900RRより重いけど、いま乗ってもコンパクトな印象は強く、質量感が増した現行R1と比べれば、むしろ親しみやすさがある。
エンジンは、152馬力もあるので当然ながらワインディングで乗るには十分にパワフルで、しかもアクセル操作に対して従順。公道で快感を味わえるスポーツ性は、ちょうど10年経った現在でも、まるで色あせた感じがしない。
GSX-R1000は、04年型をお借りした。初代の01〜02年型から、03年型ですでにレースユースを意識した大幅刷新を受けた2代目だ。R1000シリーズは、05〜06年型を名機と称える声も多い。しかし、年式が新しいことや高人気が手伝って、この3代目はかなり高値安定。対してこの2代目ならば、60万円ほどの予算から狙えるのがうれしい。
現行やそれに近いR1000は、SSとしては街乗りがしやすい設計なのだが、この2代目に乗ると、そんな性格が10年前のモデルから引き継がれていたことに気づく。車体は、やや大柄に感じるが重さはない。これが2代目R1000最大の長所。エンジンも操れる範囲内でパワフルなので、やや狭い峠道でも楽しく遊べてしまう。
ところで、10年よりもうちょっと時代をさかのぼれば、国産の4気筒リッターSSばかりでなく、いまも昔も2気筒エンジンで戦うドゥカティだって、だいぶ手が出しやすい価格になる。高級イメージが強いドゥカティの旗艦SSも、90年代後半まで年式を下げると70万円のラインが見えてくるのだ。
今回お借りしたのは、916時代の限定車で、排気量が996ccに拡大された916SPS。スーパーバイク世界選手権でドゥカティに戻ったカール・フォガティが、大活躍していた頃のマシンと言えば、懐かしく感じる往年のレースファンも少なくないだろう。
ドゥカティの魅力はまず、そのスタイリングにある。そういった意味では、996を含む916シリーズは、現行型ドカにつながる王道デザインではないだろうか。
もちろん、走りの良さも忘れてはいけない。Lツインデスモドロミックならではの回転上昇フィールやエンブレ、
R750をベースとする手法により開発され、01年型でデビューしたR1000は、03年型で全面刷新。メインフレームは目の字断面の押し出し材を使った新作となり、シートレール部も改良。オプションパーツを使えばスイングアームピボット高も調整可能。エンジンは、基本こそ初代から受け継ぐが、電子制御系の高度化などで出力を4馬力アップ。縦目2灯ヘッドライトも採用した。04年型はその色変更版だ。
- ●エンジン形式 並列4気筒DOHC4バルブ
- ●総排気量 988cc ●ボア×ストローク 73.0mm×59.0mm
- ●最大出力 120.7kw(164ps)/10,800rpm
- ●最大トルク 110.8Nm(11,3kgf・m)/ 8,400rpm
- ●冷却方式 水冷 ●ミッション 6速
- ●全長×全幅×全高 2,045mm×715mm×1,133mm
- ●ホイールベース 1,410mm ●シート高 820mm ●乾燥重量 168kg
- ●タンク容量 18L ●タイヤサイズ F:120/70ZR17 R:190/50ZR17
- ●中古参考価格:64万円
1.03年型で、ライバルに先駆けてラジアルマウント式フロントブレーキキャリパーを採用。フロントフォークインナーチューブのコーティングは、初代はゴールドだったが2代目はブラック。2.メーターは、指針式回転計と液晶パネルを組み合わせた、当時もいまも定番デザイン。3.目の字断面の押し出し材が使われたフレームは、レースユースも考慮した設計。4.試乗した車両には、ヨシムラ製マフラーやオーリンズ製リアサスが組み込まれていた。自分好みの方向性でカスタムされた中古車に出会えれば、価格的にラッキーかも。
軽い車体がもたらす軽快感は、10年以上経ったいまでも一級品だ。ただし、ドゥカティの旗艦にちょい乗りやツーリングは不向き。スパルタンな乗り味を堪能してこそ、ドゥカティストなのだ!?