人生楽ありゃ苦もあるさの投稿検索結果合計:1枚
「人生楽ありゃ苦もあるさ」の投稿は1枚あります。
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人生楽ありゃ苦もあるさの投稿一覧
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2020年04月13日
66グー!
「ヒカリちゃん今までご苦労様でした」
店長が私に花束を渡してくる
「ヒカリお疲れ様」「先輩お世話になりました」「新しい場所でも頑張って下さい」
同僚や後輩たちが拍手と共に応援の言葉をかけてくれる
「ありがとうございます」
私は何度も何度も頭を下げる。
ありがとうありがとうありがとうありがとう。っと握手を交わす
「ではありがとうございました~」
店を後にする……
「……ハァ」
緊張が解け、思わずため息が出た。
渡された花束を見る。
「苦手なのよね。こういうの」
何ともし難い居心地の悪さを感じながら、駐車場までの街灯に照らされた夜道を歩いていく……
皆の顔が頭の中でストロボのように流れる。
皆が私との別れを悲しんでくれた。
「まぁ、だからと言って戻りはしないんですけどね」
駐車場に着いた。
愛車のFZ400のシートに花束をネットでくくりつける。
「………」
花束が見事にひしゃげてしまった。
いや、流石にこれはイカンでしょ……
着ていたパーカーのファスナーを開け、体との間に花束を押し込む。
「うぅ」
濃厚な花の香りにむせそうになる。
て言うかむせた。
FZに火を入れる。
ブォンブォンと直4の良い音が刻まれる。
ヘルメットを被り空を見上げる。
花の香りに包まれながら見る夜空は、いつもよりも綺麗な気がした。
昔から人付き合いが苦手だった。
男女の中はもとより、同性間でも友達であっても苦手だった。
仲良くは出来る、しかし長いこと付き合っていると、自分や相手のアクが見えてきて疲れてしまう。
「お前さ繊細すぎ。思春期かよ」
元カレはそんな私を見て、大層めんどくさそうに呟いた。
「あんた、そんな人に言えるほど大した人間なの?」
友達の辛辣な言葉。
「分かってる」
分かっているんだけど、、、
「はぁぁ」
深夜の空港のフライトロード。
その道路脇に座り、タバコをふかす。
これからどうしたものか。
どこに行こうか? 次の仕事は何をすれば? そもそも、いつまでこんな人生の逃避行を続けるのか?
不安で心が押し潰されそうになる。
「ねえ、君はどう思う?」
FZに問いを投げる。
FZ400。いつぞやの職場で誘いを断れず免許を取らされて、これまた提案を断れずに買ってしまったバイク。
最初は嫌だった。でも気付けば今でも乗っているほどには気に入ってしまった。
そんな私の愛車。
「ーー」
無論、FZは何も言わない。
「しょうがない。とりあえず走るか」
タバコを地面に押し付け、携帯灰皿に入れる。
「どこ行きたい?」
FZに行き先を尋ねる。
「そっかそっか」
グローブを着け、ジャケットを羽織る。
物言わぬバイクに1人話しかけるなど端から見れば立派なーー
「メン○ラだね」
県を南から北へ上っていく。
途中、何度かコンビニに寄って缶コーヒーと暖を取る。
そしてオマケでタバコをふかしてはFZと会話。
少しずつ東の空が明るくなっていく。
「あ、やっば」
県境を越す手前でガソリンが心許なくなってきた。
最寄りのガソスタで、FZに奮発しハイオクを満タンに見舞う。
「どうだ。ハイオクは美味いか!?」
再び北上していく。
回転数高めでFZの音を存分に楽しむ。
しかし目的地に近づくにつれ、肌寒くなってきた。
「寒い! 私を風から守って~」
体を屈めてFZの小さなビキニカウルに潜り込む。
そして……
「到着~!」
山の展望台の広い駐車場、私は思わず声を上げる。
何とか間に合った。
まばゆい朝日が真っ正面から差し、私とFZを照らす。
眩しさに目を細める。
寒い山の朝。
夜通し走ったこともあり、すっかり体が冷えてしまった。
FZのエンジンに手を近付けて暖をとる。
「はぁ……綺麗」
見える朝日はあまりにも綺麗だった。
人生の逃避行。
この旅の終わりはまだ見えないけど。
今は少しだけ、この瞬間を楽しもうと思った。
「ふぅ~」
エンジンで温まった手をタンクに添える。
これからも私を支えてね。
走ってる時は私が君を支えるから。
ーーだから。
「これからもヨロシクね」
FZのタンクを撫でる。
私とFZの旅は終わらない。
行こう。
決意の朝を何度も迎えて。
今日もアクビをひとつ
変わらずタバコを吹かしてーー
待ってろよ。
私はなかなか手強いぞ。
次こそは負けないからな。
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