マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

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    最速。究極頂点の理を布く者。
    それは最早、人の思想の範疇では無く
    1つの概念の体現である。
    疾走り疾走らされ、果ての無い流転の
    縛鎖が軋み縺れ合う機巧。
    かつて海輪は満足を求めていた。
    己の道楽のたどり着く終着点を、完全たる安息の
    息吹のもとに下される旅路の頂を渇望していた。
    おそらくこれは、今をもって変わらぬ思いだ。
    故に神の定めた運命に斃れることは本望。
    神に限らず、今や最速の悪名は世に轟き、
    向けられる怨嗟と恩讐は計り知れない。
    何時何処で運命に斃されようとおかしくないほどに。
    だが、海輪は疾走り続けている。
    放っておいても迫る報仇の刃を甘んじて受けようとせず、
    それを跳ね除け、時には返り討ちにさえして
    屍山血河を尚踏みしだき疾走り続けている。
    何故か。
    今更命が惜しいのかーー否。
    理を示現し続ける為かーーそれも、きっと否だ。

    選んでしまったからだ。

    己が手を油に染めることを。
    疾走ることで不人気車を救うという手段を。
    最速たれという道を。
    退くも戻るもない修羅道に救済は無い、
    求めること自体許されない。
    一度足を捕らわれたならば何処までも、
    転がり落ち続けるしかない。
    業の泥沼を這いずり、排ガスを撒き散らすだけの害毒。
    どんな大層な理を声高に叫んだところで
    為している所業はただの暴走行為、
    愚かしい意地と変わらぬは百も承知。

    ーーだが、それ故の最速。

    だからこそ、汚物に等しい生き様を貫く。
    潔く免許を差し出す往生際の良さなど微塵もなく、
    最速として最速を広め続ける為に渾身で足掻く。
    もしも躊躇うならばーー
    本性から最速ではないということならば。
    下らぬ偽善と偽悪に頃された諭吉たちの魂は、
    恨むことも安らぐことも出来ないではないか。
    故に海輪は吼えるのだ。
    正真の最速を。
    油塗られた道を望んだ、己の最も奥深い闇を。
    一身に怨念を集め嗤い続ける。
    油煙の蜃気楼の果てに浮かぶ、最速の幻をよすがに。
    海輪は何処までも救われない壊れた倫理を、
    後生大事に抱えている。
    しかして、二律背反に道楽の終着を、
    自身の断末魔を同時に夢想している。
    そして、それさえも所詮は連綿と連なる
    最速の螺旋の範疇に過ぎないと理解している。
    この折り重なる矛盾。
    一般人を捨てた外道の求道。
    最初から道など無く、死屍累々を切り拓いても
    答えなど無いのかもしれない。
    それでも、疾走り続けると誓った。
    誰にも譲らぬ、何にも退かぬ。
    未だ事故の絶えぬ世であろうと、
    真の最速はこの世に一匹でいい。

    #バイクのある風景

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