警視庁のデータから紐解く、バイク事故の大きな原因と事故を防ぐ心がけ
バイク事故を防ぐためには、二輪車ならではの原因や傾向を知っておくことが大切です。例えば、二輪車による交通事故が起こりやすい状況や時間帯がわかると、それに応じた対策もしやすくなると思います。
本記事では、警視庁が出しているバイク事故の発生件数や死亡者数の構成比などのデータをご紹介していきます。後半では、この情報から見えてくるバイク運転時の対策も解説します。バイク事故の防止に関心がある方は、ぜひ本記事をチェックしてみてください。
警視庁のデータで見る、バイク事故の発生件数・死亡者数
まずは、警視庁のデータを使い、バイク事故がどのぐらいの数・割合で発生するのかを確認していきましょう。
二輪車の交通人身事故発生状況
警視庁が出している資料によると、令和2年上半期の東京都内におけるバイク事故の発生件数と死者数、負傷者数は以下のとおりです。
このデータにおける二輪車の交通事故とは、原付バイクおよび自動二輪のバイクが関係した事故を指します。そして、発生件数においては、バイクが第1・第2当事者になった件数の合計となります。死者数と負傷者数は、バイク乗車数の被害者数です。
同資料内の平成23年のデータと比べると、バイク事故の発生件数・死亡者数ともに半減しています。しかし、二輪車による死亡者数13人は、令和2年上半期の交通事故死亡者数全体の20.3%を占めています。したがってこの数字は、決して軽視できるものではありません。
ちなみに、交通事故全体における死傷者数は近年、減少傾向にあり、その理由はドクターヘリなどの導入による救命医療の高度化や、車両の安全性能向上が関係しているからであるともいわれています。
都内・全国の交通事故死者数構成率
同じく警視庁の「都内・全国の交通事故死者数構成率」を確認すると、東京都内では、四輪車よりも二輪車(バイク)の死者数が多いことがわかります。


死亡事故の半数は午後10時~午前7時までの時間帯
警視庁の「都内・全国の交通事故死者数構成率」には、東京都内におけるバイク乗車中の交通死亡事故に関する以下のグラフも掲載されています。
このなかで発生時間帯別に注目すると、バイク死亡事故の約半数は午後10時~午前7時までに発生していることがわかります。なかでも特に多発しているのは、午前6時から午前8時の時間帯です。また、単独事故の割合が非常に高いのもバイクによる死亡事故の特徴です。

出典:都内・全国の交通事故死者数構成(都内の二輪車乗車中の交通死亡事故)
バイク事故の原因
バイクの死亡事故で最も多いのは、ガードレールや工作物との衝突による単独事故です。割合としては、4割以上におよびます。単独事故以外では、下記グラフのとおり交差点での直進バイクと右折車との事故が多い傾向があります。

このデータを踏まえて、バイク事故の原因を考えていきましょう。
スピードの出しすぎ
単独事故の原因で多いのは、スピードの出しすぎです。特に交通量が少ない深夜~早朝は、先行車や後続車の速度に影響されることなく、自由にスピードを出せてしまいます。その結果、カーブなどでバイクの制御ができなくなり、ガードレールなどに衝突することが多いのです。
また、初めて出かけるツーリングコースなどでも、カーブの深さや勾配がわからず、スピードの出しすぎでガードレールなどに衝突しやすくなります。
気の緩み
気の緩みには、いくつかの種類があります。まず、人が少ない時間帯や場所では、以下のような気持ちになりがちです。
また、ロングツーリングに出かけたときには、単調な高速道路や長時間の運転によって疲労が生じ、気が緩みやすくなります。
予測の甘さ
予測の甘さは、直進バイクと右折する対向車の接触事故に多い原因です。「対向車は右折することがないだろう」という過信でスピードを出しすぎた場合、相手が急に右に曲がったときに止まれなくなってしまいます。
また、普通自動車と比べて車体が小さなバイクは、並走車や対向車が確認できないことも多いものです。バイクには、実際のスピードよりも遅く感じられる傾向もあります。そして、四輪車と二輪車の両方に乗る人は、こういったドライバーの認識の違いを知らず、同じ予測で運転をしてしまっている可能性もあります。
事故を防ぐために意識したい心がけ

バイクによる交通事故を防ぐには、以下の点に注意しながら運転する必要があります。
指定・法定速度を遵守する
バイクの死亡事故を防ぐには、指定速度と法定速度を遵守し、スピードを出しすぎない運転をすることが重要です。バイクの法定速度は、以下のようにバイクの種類と排気量ごとに異なります。原付と125cc以下の普通自動二輪車は、高速道路での走行ができません。
実際の道路を走行するときには、道路標識などに表示された指定最高速度を守る必要があります。
ただし、バイクの場合、風や路面状況の影響を受けやすい特徴があります。したがって、ツーリングなどに出かけるときには、単純に法定速度と指定速度を必ず守るだけでなく、自分や周囲の状況を考えながら安定的に走行できるスピードを出すようにしてください。
カーブ手前や交差点では十分に減速する
次の注意点は、カーブや交差点付近の走行についてです。まず、バイクでカーブを曲がるときの基本は、手前で十分な減速を行なう「スローイン・ファーストアウト」です。このポイントを心がけることで、ハイスピードでカーブに入ることで生じる外側に押し出す遠心力を弱められます。両膝を使って車体を絞めて、カーブの先を見ることも重要です。
交差点における右折車との事故を防ぐには、まず「相手が急に右折してくるかも?」と警戒をして、状況次第で止まれる速度を維持する必要があります。そして、先述のとおり、バイクの場合は、実際のスピードよりも遅く走行しているように見える可能性もあります。ですので、右折車との認識をあわせるための減速も必要となるでしょう。
すり抜け運転は極力控える
すり抜け運転とは、バイクや自転車などの二輪車で普通自動車の側方を通過する行為です。なかなか進まない渋滞や赤信号の車列では、そういう行為がよく見られます。
すり抜け運転は、停車している普通自動車が発進するとき、二輪車の巻き込み事故を防ぐ観点では、以下のような法律に抵触しなければ違法性はないとされています。
しかし、この運転方法は、普通自動車の側方を通過するときに、相手方のドアミラーやボディと接触する可能性があります。また、タイミングが悪ければ、バランスを崩して転倒することもあるでしょう。したがって、すり抜け運転は、基本的には違法ではないものの、交通事故につながる危険性という意味では、極力控えたほうがいい行為になります。
危険予測を行なう
交通事故は、運転技術の未熟さというよりも、どちらかといえば認知や判断、予測といった複合的なミスによって起こりやすい傾向があります。したがって、安全なバイク運転をするためには、以下のような危険の素早い認知と、その結果に対してとるべき行動を考える判断と予測をする癖をつけることが大切です。
危険予測には、さまざまな方法やトレーニングがあります。例えば、交通事故に関係する子供やお年寄り、普通自動車といった相手の特性を知ることも、適切な予測をするには非常に大切です。強風や濃霧、雨などの気象条件によっても、危険予測は変わってくると思います。
また、知らない地域にツーリングに出かけるときの事前調査や計画にも、危険予測につながる効果があります。例えば、急カーブが続くワインディングロードを目指す場合、そのエリアに入る前に休憩をとって集中力を高めたり、どのぐらいカーブが続くのかを確認したりするだけでも、事故のリスクは下がりやすくなります。
死亡リスクを減らすならプロテクターを装着する
バイク事故における致命傷部位は、以下の円グラフのとおり、頭部と胸部がトップ2を占めています。次いで多いのは腹部です。

バイクの乗車時には、当然のことながらヘルメットの着用が必要です。また、ヘルメットの脱落を防ぐために、あごひもをしっかり締めることが重要となります。そして、致命傷部位になりやすい胸部や腹部を守り、死亡リスクを減らすには、プロテクターを装着することも大切です。
バイク用プロテクターについては、こちらの記事で詳しく解説しています。興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:バイク用プロテクターは必要?種類や選び方、おすすめアイテムもご紹介
まとめ
警視庁のデータによると、バイクが関係する交通事故の多くは、道路上の車両や人の少ない午後10時~午前7時の時間帯に起こりやすいことがわかります。そして、二輪車の場合、その4割以上がガードレールや工作物などとぶつかる単独事故です。
バイクのライダーがこうした事故を起こす背景には、以下の原因があると考えられています。
そして、これらの原因への対策を考える場合、以下のポイントに注意をして運転することが大切になります。
バイクで転倒したときの死亡リスクを防ぐためにも、頭部を守るヘルメットと、胸部や腹部を保護するプロテクターを装着してみてください。
本記事は、2021年1月12日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。