バイクのカウル割れや傷の修理・補修方法
走行中の飛び石や立ちゴケ、転倒などによってカウルに割れや傷が入ってしまった経験はありませんか?カウルに傷が入ったままでは、外観だけでなく安全面でも不安が残ります。
ここでは、バイクのカウル割れや傷の修理・補修方法を、わかりやすく解説します。カウルの役割や素材、種類などもお伝えするので、愛車を修理に出そうか悩んでいる方は参考にしてみてください。
また、カウルの修理や塗装を業者に依頼したい方は、以下のページからチェックできます。
カウルの役割や素材、種類

まず、カウルの役割や素材、種類について解説します。
カウルの役割
バイクのカウルとは、車体を覆うためのパーツです。合成樹脂などの軽量素材でつくられており、重量にできるだけ影響を与えないようになっています。カウルは、「カウリング」「フェアリング」と呼ばれることもありますが、意味は同じです。
カウルは流線型をしており、走行中の空気抵抗を減らす働きをしています。空気抵抗を減らすことでスピードアップが期待できるため、スピードを競う競技では、カウルは必須パーツです。
カウルにはスピードアップのほかに、走行中の向かい風を抑えることで、ライダーの疲労や体温低下を防止する効果もあります。
カウルの素材
カウルの素材には、大きく分けてABS・カーボン・FRPの3つの素材があります。それぞれの素材について見ていきましょう。
ABSは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(Acrylonitrile Butadiene Styrene)のことで、樹脂プラスチック素材とも呼ばれています。衝撃に強く軽量で、価格が安いのが特徴です。熱や油にも強く、加工しやすいのもメリットでしょう。
カーボンはプラスチック樹脂に炭素繊維を配合したもので、金属と同等の強度を持ちながら、金属よりも軽いことが特徴です。ABSやFRPと比べて値段は高めですが、軽量化が必要な競技用バイクなどで多く採用されています。
FRPはファイバー・レインフォースド・プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)のことで、繊維強化プラスチックとも呼ばれている素材です。プラスチック樹脂にガラス繊維などが配合されており、低コストで加工の自由度が高いことが特徴。
ABSとFRPは性質が似ていますが、ABSは純正品、FRPは社外品などで多く使われる傾向にあります。その理由として、ABSはプレス機による加工に適しており、大量生産に向いているからです。一方でFRPは、手作業による生産に向いているため、大量生産の必要性が少ない社外品で多く使われています。
カウルの種類
カウルの種類には、フルカウル・ハーフカウル・ビキニカウルの3つがあります。それぞれの違いなどを確認しましょう。
フルカウルとは車体全体を覆ってしまうカウルのことで、車体全体が空気抵抗を受けにくくいのが特徴です。速度性能を求めるスポーツバイクや、長距離走行を行なうツアラーバイクなどに採用されています。
ハーフカウルとは、フルカウルから車体下部のカウルがなくなったもので、ビキニカウルは、メーターやヘッドライト周りだけを覆う小さなカウルのことです。ビキニカウルはメーターバイザーなどと呼ばれることも。
カウルが小さくなるにつれて、空気抵抗を抑える効果は期待できなくなります。小さなカウルは走行性能よりも、デザイン性が重視されているといってよいでしょう。
今紹介したフルカウルなどのほかに、車体下部を覆うアンダーカウルやシートカウルなどもあります。カウルの役割や種類については、以下の記事で詳しく解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。
カウルに傷が付いた場合の補修方法
バイクの塗装は、下地の上に塗料とクリア塗料が重ね塗りされており、カウルに傷が付いてしまった場合、塗装をどこまで傷つけたかによって補修方法が異なります。それぞれのパターンを確認していきましょう。
細かい傷の場合
傷が細かく、塗装の下地まで達していない場合は磨くだけでも十分です。最初に2000番の耐水ペーパーで磨き、さらにコンパウンドで仕上げ磨きをするとよいでしょう。傷がごく軽い場合は、コンパウンドだけでもきれいになります。
塗装の下地が見えている場合
傷が塗装の下地まで達している場合は、傷の修復と塗装の補修が必要です。塗装の補修はタッチアップペンを使いましょう。手順は以下のようになります。
1で使用する耐水ペーパーの目は、傷の深さなどによって調整してください。あまり粗いペーパーをかけると塗装が剥がれてしまうため、気を付けましょう。
2の脱脂は、塗装では必須です。脱脂をしないとカウル表面と塗料がうまく密着せず、塗装がすぐに剥がれてしまう原因になってしまいます。
傷面積が広い場合
傷の面積が広い場合は、タッチアップペンでは色むらが出るため、塗装が難しくなります。できればスプレーガンがほしいところですが、傷の面積によっては、缶スプレーでも可能です。
また、傷にバリやささくれがある場合は、ポリエステルパテ(ポリパテ)で傷を埋めてから補修します。
傷の面積が広くなればなるほど、個人での補修が難しくなることから、自信がない場合はプロに任せましょう。
個人で補修する場合の手順は、以下のようになります。
2で使用するペーパーは、粗めのものでも大丈夫です。一方で、4で行なう塗装前のペーパーがけは、細かいもので行ないましょう。
5で研磨したあと、空気の混入などによるパテの凸凹が見つかった場合は、もう一度脱脂してからパテ盛りを行ないます。
6のプラサフは下地づくりです。プラサフなしでも塗装はできますが、プラサフで下地をつくっておいたほうが仕上がりは美しくなります。プラサフ塗布後に表面がザラつく場合は、細かい耐水ペーパーで表面を磨いてください。
塗装の際は、薄塗りを何回か繰り返しましょう。一度で塗ろうとすると、塗料が垂れたり色むらが出たりなど、失敗の原因となってしまいます。
カウルが割れた場合の修理方法
割れてしまったカウルは、プラリペアで補修します。プラリペアとは、合成樹脂パウダーと専用液剤を混ぜて使う補修剤です。普通の接着剤による補修では、割れたカウル同士を接着するだけですが、プラリペアの補修はカウルを溶かしてから固めることから、補修後も強度が保てるほか、欠けた部分の造形もできます。
プラリペアを使った補修の手順は、以下のとおりです。
1で割れた箇所をV字型に削るのは、プラリペアの接着面積を広くし、V字の溝により多くのプラリペアを入れるためです。V字に削らずプラリペアを使うと、接着面積が狭く十分な強度が保てません。割れた箇所が広範囲な場合は、カッターナイフなどである程度削ってしまえば、作業がスムーズに進みます。
2でテープを固定するのは、プラリペアが流れ出さないようにするためです。
3でプラリペアを塗布しますが、必要以上に盛りすぎないようにしましょう。プラリペアは一度硬化すると非常に硬くなるため、盛りすぎると削るのが大変になってしまいます。
4の成形では、最初はリューターや金属ヤスリなどで削るとスムーズです。大まかに削ったあとで、徐々にペーパーの目を細かくしていき、仕上げてください。成形後にプラリペアの盛りが足りない場合は、もう一度プラリペアを塗布しましょう。
カウルの修理をプロに任せる場合
カウル修理を自分でやる自信がない場合は、プロに任せましょう。特に傷や割れの範囲が広い場合は、塗装器具が必要になるなど、個人での修理が困難です。
カウル修理の工賃は、ごく軽い擦り傷なら3,000~4,000円、塗装も必要な軽微な損傷で3~5万円、広範囲な傷や割れで5~8万円程度です。
ただし、車種や塗装のタイプによっては数十万円かかってしまうこともあり、カウルを交換したほうが安い場合もあります。
このように工賃は大きく差があるため、あらかじめ見積もりをもらうことが大切です。グーバイクでは全国約2,000の加盟店のなかから、お近くのバイクショップを探せます。作業実績や工賃の目安などもわかるので、下記リンクから一度お探しください。
まとめ
カウル割れや傷の修理・補修は細かな作業を必要としますが、自分でできればメンテナンス費用を大きく節約可能です。
カウル割れや傷の修理・補修は、特に難しい知識を必要ではありませんが、各パーツの取外しには専用工具や専門知識が必要な場合もあります。メンテナンスに不安がある方は無理に作業を行なわず、バイク販売店へ依頼しましょう。
本記事は、2022年1月29日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。