クランクケースリードバルブとは?ピストンリードバルブとは何が違う?
2ストロークエンジン車を持っている方なら、クランクケースリードバルブという言葉を聞いたことがあるかもしれません。しかし、聞いたことはあってもその構造や役割までは詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、バイクの吸気形式の一つであるクランクケースリードバルブについてご紹介していきます。
クランクケースリードバルブとは?
ここからは、クランクケースリードバルブについての説明と、リードバルブ自体の役割を解説します。
リードバルブの役割とは
リードバルブとはエンジンパーツの一つで、吸排気のためのバルブを持っていない2ストロークエンジンで吸気弁の役割を果たすものです。
吸気はピストンの動きによって発生する負圧を利用しますが、リードバルブがないと混合気の吹き返しによりキャブレター周辺に大量のガスが飛び散ってしまいます。吹き返しを防ぐためにもリードバルブは非常に重要なパーツです。
クランクケースリードバルブとは
クランクケースリードバルブとは、3種類ほどある2ストロークエンジンの吸気形式の一つで、最近まで採用されていた形式です。クランクケースリードバルブでは混合気を一度クランクケース内に取り込み、シリンダーへと送気して点火します。
ピストンリードバルブとの違いとは?
クランクケースリードバルブのほかに、ピストンリードバルブという形式も存在します。クランクケースリードバルブとの違いについて以下で詳しく見ていきましょう。
ピストンリードバルブとは
ピストンリードバルブとは、シリンダーに空いた吸気ポートをピストンの上下運動により塞いだり開けたりするピストンバルブと、吹き返しを防ぐためのリードバルブを併用した形式のことです。クランクケースリードバルブとは異なり、ピストンリードバルブはシリンダーに直接取り付けられています。
ピストンリードバルブは、エンジンを簡単に高出力化しやすいのも大きな特徴です。ただし、吸気のタイミングがピストンの動きに左右されてしまうこともあり、高出力化する場合はピーキーな出力特性になるため、市販車向きではないエンジンでもあります。
また、シリンダーからキャブレターまでが近いこともあり、スロットルの開きに対してレスポンス良く反応する点もピストンリードバルブ形式の特徴です。
ピストンリードバルブとクランクケースリードバルブの違いについて
構造自体は似ている点も多いピストンリードバルブとクランクケースリードバルブですが、クランクケースリードバルブはクランクケースに、ピストンリードバルブの場合はシリンダー側面にリードバルブが取り付けられているという違いがあります。ピストンリードバルブはシリンダーに直接キャブレターがくっついているように見える点も違いの一つです。
リードバルブの取り付け位置が違うことで、それぞれのエンジン特性も異なります。ピストンの動きに吸気が左右されるピストンリードバルブの場合はピーキーなエンジン特性を持ち、クランクケース内の負圧によって吸気を行なうクランクケースリードバルブは、ピストンの動きに吸気が左右されないためエンジン特性がマイルドです。
クランクケースリードバルブのメリット・デメリット

ここからは、クランケースリードバルブのメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
クランクケースリードバルブは、ピストンの位置に依存せずにクランクケース内が負圧であれば常に吸気することができます。ピストンの動きに左右されず吸気が一定なため、ピストンリードバルブに比べて吹き返しが少ないところが利点です。
また、吸気が一定なことでエンジンのパワーを大きくしやすいのもクランクケースリードバルブのメリットです。そのため、モトクロッサーやロードレーサーなど高出力が求められる車両では、クランクケースリードバルブが多く採用されていました。
デメリット
クランクケースリードバルブは、ピストンリードバルブに比べて構造が複雑で、簡単に分解することができません。そのため、部品交換の際には技術が必要となることが多いです。部品点数も多いため、オーバーホールを行なう際にはコストがかかってしまうことがあります。
また、キャブレターからシリンダーまでの区間がピストンリードバルブに比べて長いため、アクセルに対してのレスポンスが鈍くなってしまうのもデメリットの一つです。ただし、マイルドな乗り味で扱いやすいことから、高出力を必要としない市販車などではデメリットとは言い切れない面もあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?一見、構造は似ているクランクケースリードバルブとピストンリードバルブですが、エンジン性能やメリット、デメリットなど異なる点も多いです。
最近ではほとんど新車で販売されていない2ストロークエンジン車ですが、現在も人気が高い状況が続いています。構造がシンプルではあるものの、製造からも時間が経っているため整備が欠かせません。そのための構造を知っておくことは、愛車のコンディションを長く保つことにもつながるでしょう。
本記事は、2020年7月30日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。