バイクのタンクの錆取り・コーティングの手順や必要な道具、費用の目安について解説
目次
しばらく乗っていないバイクや、中古で購入した車両の場合、ガソリンタンクに錆びが生じている可能性があります。バイクを安全かつ快適に乗るには、タンクの錆取りが必要です。しかし、バイク初心者の場合、錆取りの必要性や具体的なやり方がわからないこともあるでしょう。
今回は、バイクのガソリンタンクが錆びる理由と錆取りの必要性を確認したうえで、錆取りで使う道具やコーディングの手順、実際にかかる費用相場などについて説明していきます。
バイクのタンクが錆びるのはなぜ?
バイクのタンクが錆びる理由は、以下の現象を通してタンク内に水分が発生するからです。
結露は、気温の低い真冬の朝晩などに、著しく冷えたタンク内の空気が水分になることで生じます。一方で、乗車頻度の高い真夏などは、寒暖差も少ないことから、結露が起こることは滅多にありません。
そして、結露の水分がタンクの金属を酸化させた場合、タンクに錆が生じるのです。
バイクタンクの錆びはどのくらいで生じるもの?
例えば、通勤通学などで日常的にバイクに乗っていれば、走行時に揺れたタンクのなかでガソリンが撹拌されるため、錆が生じる可能性は低いでしょう。一方で、半年~1年のように長期で放置すると、ガソリンの入っていない空間に錆が生じやすくなります。
ちなみに、かつては長期保管をするときに、タンクをガソリンで満タンにして空気を追い出すのが一般的でした。しかし、現代のガソリンに含まれているバイオエタノール燃料は、水分を吸湿する水溶性です。そのため、ガソリン自体にもタンクに錆を発生させる特徴があることから、ガソリンを抜いて保管するのが理想となります。
バイクのタンクが錆びることで生じる問題とは?
タンクに生じた錆が少しだけであれば、大きな問題になることはありません。しかし、ガソリンタンクの錆は、以下のようなバイクトラブルの原因になります。こうした問題を起こさないためにも、錆を生じさせない対策や定期的な点検、錆取りなどが必要となるでしょう。
ガソリンタンクに穴が空くから
長期保管で錆がひどくなると、タンクに穴が空いてガソリンが漏れ出す可能性が高まります。ガソリンは、揮発性が高く引火しやすい液体です。ガソリンが漏れたバイクの近くでタバコを吸ったり、静電気が生じたりした場合、ガソリンに引火して爆発を起こす危険性もあります。
また、ガソリンタンクの天井部分などに穴が空いた場合、そこから雨やホコリなどが混入する可能性も出てくるでしょう。
エンジントラブルが起こる
タンクから剥がれ落ちた錆は、ガソリンと一緒にタンク外に出ることがあります。この場合、異物である錆がインジェクション(キャブレター)に詰まってエンストなどのトラブルを起こす原因になるため、注意が必要です。
タンクの錆取りとコーティングに必要なアイテム

ガソリンタンクのメンテナンスでは、以下3つの作業を行ないます。
ここではまず、バイクのガソリンタンクにおける錆取り・コーティングに必要なアイテムを確認しておきましょう。
バイクにおけるタンク内部の錆取り手順
バイクのガソリンタンクの錆取りには、いくつかのやり方があります。ここでは、市販の錆取り剤による化学反応で、錆を除去する手順を見ていきましょう。
1.ガソリンタンクを外す
ガソリンタンクの洗浄・錆取り・コーティングは、車体からタンクを外した状態で行ないます。ガソリンタンクを取り外すには、周辺のカバーやシート、ホースなどを外すことも必要です。また、タンク本体からは、以下のパーツも取り外しましょう。
2.タンク内のガソリンを抜く
ガソリンを抜いてタンク内を空にします。燃料コックを外したうえで、タンクを傾けながら用意した容器にガソリンを移していきましょう。
3.タンク内部の状態をチェックする
ガソリンが抜けたら、洗浄や錆取りをする前に、どのくらいの汚れや錆があるかをチェックします。そうすることで、作業後に錆がどれだけ取れたか、感覚的にも確認しやすくなります。
ガソリンタンクの錆は、ペンライトなどで内部を照らせば簡単に把握可能です。ただし、錆というのは普通の方法では目視できない、タンクの天井部分やキャップの口まわりにも生じやすい特徴があります。
そのため、目視できる範囲の金属がきれいな状態であっても、長く給油をしていなかった中古車などの場合は、錆取り作業を行なったほうがよいでしょう。
4.タンク内部を洗浄する
ガソリンタンクのなかに入っているのは、錆だけではありません。古いバイクの場合、たくさんの汚れ・ホコリ・ゴミが入っています。錆取り剤やあとで使うコーディング剤の効果を最大限に発揮させるには、ガソリンタンク内のゴミや汚れを取り除いておくことが非常に大切です。
透明なポリ容器に移したガソリンに浮遊物が多くある場合は、タンクの底に多くのゴミが残っている可能性があります。これらを除去するには、水やぬるま湯と一緒に中性洗剤を入れて、「タンクを揺する→タンク内の洗浄液を洗い流す」を繰り返す方法がおすすめです。
そうすることで、タンク内の油分を除去できます。高圧洗浄機がある場合は、洗い流す際に活用するとよいでしょう。汚れとゴミ、洗剤成分をすべて洗い流したら、タンク底にあるフューエルコックの接続口などから錆取り剤が漏れないように、テープなどを使って塞ぎます。
5.錆取り剤を投入する
タンクの汚れやゴミを除去できたら、錆取り剤を入れていきます。このとき、錆取り剤を入れたタンクは重く不安定になるため、ダンボールなどに入れて倒れないようにしてください。
錆取り剤の希釈方法などは、各商品の取扱説明書を確認しましょう。溶剤による化学反応を促進させるには、60度ぐらいのお湯を入れるのがおすすめです。タンクの天井ぎりぎりまで注いだら、テープなどを使って給油口を塞ぎます。
錆取り剤を入れたタンクは、半日~1日ほど放置します。錆取りの効果を高めるために、ときどき揺すってみてもよいでしょう。
6.すすぎと乾燥を行なう
取扱説明書に記載された時間が経ったら、タンク内の錆取り剤を抜き取ります。錆は基本的にタンクの底にたまっているため、揺すりながら抜き取り作業をしていきましょう。
錆取り剤を抜き取ったら、水ですすぎます。先述のとおり、錆は水分から生じるので、必ず乾燥させてからガソリンを入れるようにしてください。
バイクにおけるタンク内部のコーティング手順
錆取りを終えたタンクは、そのままガソリンを入れて使うことも可能です。しかし、タンクに新たな錆を生じさせないためには、錆取り後にコーティングをするのがおすすめとなります。
ここでは、乾燥・脱脂済みのタンク内部を、コーティングする際の流れを確認しておきましょう。
1.給油口以外をマスキングする
タンクのコーティング剤には、固まるとプラスチックのように硬化する特徴があります。そのため、内部のコーティングをするときには、以下のような部品をすべて外したうえで、マスキングや栓をしておくことが大切です。
穴のなかにコーディング剤を入り込ませないために、ボルトにもテープを巻きつけて差し込んでください。
2.タンクにコーティング剤を投入する
マスキングが終わったら、コーディング剤を注ぐ作業に入っていきます。具体的な使い方は、商品によって異なります。作業前に取扱説明書を必ず確認してください。
タンク内に準備したコーディング剤を注ぎ終えたら、給油口をアルミテープなどで塞ぎます。それから、液剤をタンクの全体に行き渡らせるために、持ち上げたタンクをゆっくりと回していきましょう。
3.タンクから余計なコーディング剤を取り除く
取扱説明書どおりの方法で液剤を行き渡らせたら、シリンジなどを使って、タンクの底にたまった余分なコーディング剤を取り除きましょう。フューエルコックの穴から抜き取る方法もおすすめです。タンクの底に残ったコーディング剤は、時間経過によってプラスチックのように硬化するため、残らないようにしっかり除去してください。
また、タンクの表面や周辺、コックのネジ部分などに付着したコーディング剤も、ウエスなどを使って早めに取り除くことが大事です。
4.コーティング剤を乾燥させる
余分なコーディング剤を抜き取ったら、自然乾燥に入ります。多くのコーディング剤は、完全硬化までに2~4日以上かかるのが一般的です。ドライヤーを使って乾燥時間を短縮するやり方もありますが、コーディング剤の変質やひび割れリスクを考えると、自然乾燥でゆっくり硬化させるのがおすすめでしょう。
錆取りやコーティング作業の注意点
錆取り剤やコーディング剤を使うときには、いくつかの注意点があります。
アルミタンクでは錆取り剤が使えない
市販の一般的な錆取り剤は、鉄やステンレスのタンク向けの商品です。アルミタンクの場合は、市販の錆取り剤ではなく薄めた中性洗剤で洗浄をしていきます。具体的な注意事項は、商品によって異なります。購入時には、自分のバイクで使えるものかどうかを確認してください。
サンポールは錆取り剤として使える?
そもそもサンポールは、錆取り剤ではありません。強酸の液剤のため、場合によってはタンクに穴が空く可能性もあります。また、廃棄時に中和をする必要もあることから、一般人には扱いが難しい液剤です。自己責任で使うことも可能ではありますが、タンクに生じるリスクを考えれば、使用はなるべく避けたほうがよいでしょう。
抜き取ったガソリンや液剤はきちんと処理する
抜き取ったガソリンは、携行缶に入れてガソリンスタンドに持ち込みます。錆取り剤とコーティング剤は、取扱説明書に記載された方法で扱ったうえで、自治体指定のやり方で処分をしなければなりません。
ガソリンや液剤の処理が面倒な場合は、バイク専門店で錆取りをしてもらったほうがよいでしょう。詳しい処理方法は、以下をご確認ください。
ガソリンタンク以外の問題で錆が生じる場合がある
ガソリンタンクの錆は、フューエルコックやフューエルフィルターといった他の部品の問題で生じることもあります。そのため、定期メンテナンスを続けているのになぜか錆や汚れが発生したときは、他のパーツの問題を疑って早めにバイク専門店に相談をしたほうがよいでしょう。
さまざまな店舗の作業実績はこちらからチェックできます!
>>タンクの錆取りに関する作業実績一覧
錆取りにかかる費用
タンクの錆取りをする場合、「どのぐらいの費用がかかるか?」という点はやはり気になる部分です。また、セルフで作業するのが難しい場合、バイク専門店への依頼を検討することもあるでしょう。
ここでは、セルフと専門店で作業をする場合の費用相場を説明します。
セルフでタンクの錆取りをする場合の費用
自分でタンクの錆取り作業をする場合、以下の費用がかかるのが一般的です。
バイク専門店にタンクの錆取りを依頼する場合の費用
多くのバイクショップでは、1万円~3万3,000円程度でタンクの錆取りを行なっています。タンクを外す際に手間がかかるスクーターや、タンク容量が大きなバイクは、錆取り費用が高くなる傾向があります。
また、あまりにも錆がひどい場合も、より多くの費用がかかる可能性が高いでしょう。なかには、錆取り後にコーディングを行なうプランを用意しているショップもあります。
さまざまな店舗の作業実績はこちらからチェックできます!
>>タンクの錆取りに関する作業実績一覧
まとめ
バイクのタンク内の錆は、その多くが、侵入した雨水や寒暖差による結露といった「水分」が原因で起こります。
錆を放置すると、タンク内に穴が空いたり、エンジントラブルが起こったりする可能性が高まります。そのため、タンク内の錆に気付いたときには、早めに錆取り作業をしたほうがよいでしょう。また、錆を取ったタンクに再び新たな錆を生じさせないためには、乾燥と脱脂を終えたあとに、市販の液剤を使ってコーディングをすることが重要です。
なお、ガソリンタンクの錆取りでは、最初に、タンク本体やその周辺にあるシート・カバー・ホースなどの部品を外す必要があります。さらに、コーティング前にはマスキングも必要となるため、メンテナンス初心者には難易度の高い作業になるでしょう。
こうした作業が難しいと感じた場合は、無理せずバイクの専門店に相談をしてみてください。
本記事は、2021年12月27日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。