電子制御が常識を変えた 最新バイクテクノロジー

電子制御が常識を変えた 最新バイクテクノロジー

現代では大型モデルに限らず中型モデルにもさまざまな電子制御が搭載されていることがめずらしくない。その恩恵は運動性、安全性、
快適性を飛躍的に向上させている。今や常識となったこれらの機能をしっかり把握し、これからのバイク選びに役立ててほしい。

速さを支える安全装置 電子制御が世界を変えた

 かつてはCB750FOURの200km/h達成に沸いていた世界は、50年間の技術の進化に伴って、その倍の400km/hを出せる市販車バイクを作り上げてしまった。それがカワサキH2Rだ。
 ではもしH2Rのエンジンを50年前のバイクに積んだら、400km/hを出せるだろうか。答えは当然、否。それを支え、地面に動力を伝えるフレーム、サスペンション、タイヤなどすべてが今と同様に進化して初めて達成できた400km/hなのだ。
 そしてそのなかにはさまざまな電子制御も含まれている。エンジン特性、ブレーキ、サスペンション、それらを司るECU・・・。
 電子制御が進化し、バイクが勝手に安全なライディングを提供してくれるのは、もちろん素晴らしいことなのだが、古くからバイクに親しんできた熟練のライダーのなかにはこういった電子制御の介入に違和感を覚えるライダーもいるだろう。また、逆に新しくライダーの仲間入りを果たした若者のなかには電子制御の介入なしでは安全に乗ることができない者も出てくるかもしれない。
 速さと安全性は必ずしも反比例しない。それこそが今バイクメーカーが、次世代のライダー諸兄姉に向けて必死に取り組んでいるテーマなのではないだろうか。

01

快適性

クルーズコントロール

クルーズコントロール

クルマのそれと同じ機能。高速道路などで任意の巡航速度に設定することで、アクセルを回さなくてもその速度を維持して走り続けてくれる。スイッチをOFFにするかブレーキをかけることで解除できる。あると長距離ツーリングでとてもありがたい装備のひとつ。(※CBR1000RR-Rには搭載されていない)

パワーセレクトモード

パワーセレクトモード

ライダーの好みやシチュエーションに応じてエンジンの出力特性などを設定することができる。「ロード」「スポーツ」「レイン」などの簡易的な切り替えもあれば、CBR1000RR-R FIREBLADE SPの場合はパワー、トルクコントロール、エンジンブレーキ、ウイリー挙動、サスペンション減衰特性の5つを細かく設定可能だ。

02

安全性

ABS(アンチロックブレーキシステム)

ABS(アンチロックブレーキシステム)

二輪車にとって最も恐ろしいのはタイヤのロックだ。急ブレーキをかけた際にブレーキが強すぎて、バイクは動いているのにタイヤだけが止まってしまうと、タイヤが横滑りを起こし、転倒につながる。この現象を電子制御によって起こりにくくしたのが、2018年10月から125ccを超えるバイクに義務化されたABSなのだ。(※写真はZ H2)

セレクタブル トルク コントロール

セレクタブル トルク コントロール

コーナーの立ち上がりなどでタイヤのスリップをセンサーによって感知し、エンジンのトルクをコントロールすることで、スリップを制御するシステム。さらにはウイリー状態も感知し、緩和することで最適な加速状態を維持する。メーカーによっては同システムを「トラクションコントロール」と呼ぶ。

スリッパークラッチ

スリッパークラッチ

コーナー進入時にエンジンの回転を合わさずにシフトダウンすると、急激なエンジンブレーキがかかり、チェーンが暴れることでタイヤが跳ねたりロックし、グリップを失ってしまう現象がある。この原因となるバックトルクを緩和してくれるのがこのスリッパークラッチだ。機械的に制御するものが始まりだが、電子的に制御するものが出てきている。

03

運動性

電子制御サスペンション

電子制御サスペンション

サスペンションはスプリングとダンパー、オイルによってショックを吸収する極めて機械的な構造だが、そこにも電子制御が進出している。路面状況や車体の姿勢などに応じてリアルタイムにダンパーのセッティングが変化し、対応。走行状況に合わせて圧側、伸び側の減衰力を設定してくれる。

クイックシフター

クイックシフター

かねてからレースの世界では、クラッチレバーを使わずにスロットル操作でエンジンの回転数を合わせることでシフトチェンジをするパワーシフトというスキルが一般的だった。それを電子制御の力を借りて誰でも可能にしたのが、このクイックシフターだ。これによってライダーはよりライディングに集中できるようになった。

エレクトロニック ステアリングダンパー

エレクトロニック
ステアリングダンパー

こちらも本来は機械的なものが電子式に進化し、ステアリング操作に対しての応答性、耐キックバック性能が向上し、軽量化を実現した。CBR1000RR-Rは3段階の減衰特性から選択することができ、ECUからの信号を元に減衰特性を制御。よりアグレッシブなライディングを可能にする。

スロットルバイワイヤ

スロットルバイワイヤ

ライダーがアクセルを操作すると、そこから伸びたワイヤーがスロットルバルブを開閉する時代はもう過去の話。今では250ccクラスでも採用され始めているこの機能は、アクセルを回すと電気信号がECUに送られ、アクセル開度に合わせてスロットルバルブを開閉する。これによってクルーズコントロールやトルクコントロールが可能となっている。

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