澄みきった青空が広がった真冬のある日、ツーリングの相棒であるスズキSV1000Sのエンジンに火を入れ、いつもより長めの暖機をしてから走り出した。向かった先は栃木県佐野市だ。佐野と聞いてピンときた方はかなりの麺好きに違いない。そう、今回はウマい麺を求めて北関東をグルリと巡る“麺ロード”ツーリングに出かけたのである。
麺といえば、ツーリング先でライダーがもっとも口にするソウルフード。寒い季節だとどうしても遠ざかってしまうバイクであるが、「ウマい麺」を食べに行こうという話であれば士気も高まるというもの。バイクで快適なワインディングを駆け巡ることができるうえに、大好きな麺に舌鼓を打てる。ライダーにとってこんなにも幸せなイベントはない。
ということで、最初の目的地に決めていた佐野で「ラーメン」を食すべく、東北自動車道を北上した。ご当地ラーメンのひとつとして広く知られている佐野ラーメンだが、残念ながら過去に一度も口にするチャンスがなく、それだけに期待度は高まるばかりだ。
佐野藤岡インターから走ること約10分。お目当ての「宝来軒」へは、暖をとるために休憩しながら走ってきたとはいえ、あっという間にたどり着き、なんと開店前に到着してしまったのである。しばし時間を持て余したものの、開店時間きっかりにノレンがかけられると足早に店へ入った。
メニューを眺め、選んだのはワンタン麺。どんぶりの中に大ぶりのワンタンが入ったこの1杯は、佐野ラーメン特有の青竹打ちの縮れ麺で、スープはアッサリしていながらコクのあるしょうゆ味だった。ようやく最初の1杯目を口にできた喜びに浸りながら、SVを群馬へ走らせた。
次の目的地は群馬県の水沢。佐野から100kmに満たないことと、空腹を促すために前橋まで1本道でつながっている国道50号をひたすら走って移動した。延々と続いた産業道路に別れを告げ、伊香保へつながる緩やかな山道を駆け上っていくと、うどん屋の看板が軒を連ねる通りになる。
さらに奥まで進むと、天正10年(1582年)からうどん屋を営んでいるという「田丸屋」があり、その老舗で2食目となる水沢うどんをいただくことにした。店に入り、さっそくオススメを尋ねてみると「冷たいうどんがおいしいですよ」とのこと。それならばと、ざるうどんを注文した。
水沢うどんの特徴は全国的にブームとなったコシの強い讃岐うどんと違って、どちらかといえば柔らかいうどん。前者を食べ慣れているせいか、歯ごたえにモノ足りなさを感じたが、佐野ラーメンを食べてからわずか3時間しかたっていないことを考えると、ウマいだけではなく胃にも優しいうどんであった。
水沢からは伊香保温泉郷を抜け、県道33号を走る。榛名から松井田までは細いワインディングロードが続いたが、キレのあるライディングが楽しめるSVのおかげで難なくクリア。そして国道18号にアクセスし、軽井沢方面へ数分走り、測道から入っていける旧国道18号へ進路をとった。
碓氷湖を左に眺めながらしばらく進むと、以前から一度訪れてみたいと思っていた眼鏡橋に到着した。今では碓井バイパスが開通し、クルマの往来が少なくなった旧道であるために周辺はひっそりとしているが、レンガ造りの悠然としたたたずまいには感動すら覚えた。
そして、名残惜しくも来た道を戻り、今宵の宿泊地、小諸へと向かった。 |