ライダーにとってツーリングは平凡な日常から解放され、心が満たされる至福の時間だ。風光明媚なスポットに立ち寄ったり、温泉で疲れた体をいやしたり、おいしい食材に舌鼓を打ったり、そのスタイルは十人十色。
そうした醍醐味は外せないまでも、頻繁にツーリングを楽しむ者にとってはいつもと違う何かを追い求めたいという欲求があるのも事実。ならば、それらを網羅しつつ、これまで一度も試みたことのないテーマを今回のツーリングに掲げることにした。
そのテーマとは「日本一」である。ツーリングで巡る日本一。果たしてどんなツーリングになるのか……、出発前の下調べに胸を躍らせたことはいうまでもなく、1泊2日というわずかなスケジュールのなかで可能なかぎりの日本一を巡ることにした。
さて、日本一ツーリングの舞台に選んだのは上州・群馬である。群馬といえば、走り屋系某コミックの舞台になるほどワインディングロードの宝庫として知られている。つまり、アグレッシブなライディングが楽しめるステージが数多く点在するのだ。先を急ぐツーリングではないが、やはりそうしたステージはゆったり走るよりもキビキビ走りたいもの。そんなライダーの要求に余裕でこたえてくれるCBR1000RRをツーリングの相棒にすることに決めた。
大型台風の影響を受け、予定より出発が遅れてしまったものの、関越自動車道の渋川伊香保インターで降り、最初に目指した日本一は「日本の真ん中」という渋川市。なぜ渋川市が日本の真ん中なのかというと、北海道宗谷岬から鹿児島県佐多岬を直径とする円を描くと渋川市が中心に位置するからなのだという。その中心点にある「へそ石」を参拝し、ツーリングの安全を祈願。そして、進路を西へ向けた。
伊香保の温泉街を抜け、榛名へ続くルートはヘアピンカーブが連続する本格的なワインディングロード。荒れた路面やスピードを出させないために設けられた路面の起伏がやる気を妨げたが、RRは快調に山を駆け上がっていった。山を上りきると空気が一変。榛名富士と榛名湖が目の前に見えるこのあたりは標高1000mを超えているためか、わずかに寒さが感じられ、凛とした空気が満ちていたのである。湖の畔にRRを停め、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、まだ始まったばかりの旅の精気を養った。 |