加速するブームの中で激しい主導権争いが勃発!
そもそも「ヘリテージ」とは、かつてのモーターサイクルが持っていたテイストを、現代的な技術を取り入れながら再現したカテゴリーだ。これまでのネオクラシック系が、機構や装備を含めてレトロな雰囲気を追求するのに対して、ヘリテージの場合は技術的な正常進化という要素も重要で、単に古めかしくすればすべてヘリテージというわけではない。
このカテゴリーがとくに意識されるようになったのは、14年型でBMWのRナインTが登場し、これを追うように15年型でドゥカティのスクランブラーシリーズと海外仕様のヤマハ・XJR1300(プレストコーポレーションによる日本入荷モデルはXJR1300Cの名称)がデビューしたころから。カフェレーサーなど、60〜70年代の二輪車をモチーフとしたモデルというのは、これまでも数多くあったが、それらの機種やカスタマイズ手法も含めて欧州などで人気が高まっていった。
この傾向は、16年になってさらに強まっているようで、今春に日本で開催されたモーターサイクルショーの会場でも、さまざまなヘリテージモデルが展示されていた。たとえばホンダは、ヘリテージというカテゴリーが意識される以前から発売していたCB1100を、より深化させたコンセプトCBを披露。このモデルは昨秋の東京モーターショー仕様の発展型なのだが、それに加えてカフェレーサースタイルのコンセプトCBタイプIIを用意している。さらに、軽二輪クラスのVTRをベースとしたカスタマイズドコンセプトも参考出品。こちらもカフェレーサー系で、ヘリテージブームをメーカーとして意識していることがわかる。
一方、ヤマハは前述の欧州版XJRと16年型で投入したXSRシリーズで、スポーツヘリテージという独自カテゴリーの構築をすでに進めている。国内のショーでもXSR900が主役の1台となっていた。
スズキは、新型SV650ベースのコンセプトモデルを発表。カフェレーサーと70年代舗装路ラリーカーの融合というテーマで、これもヘリテージの一種と言える。
火付け役となった欧州のブランドだけでなく、国内メーカーにもヘリテージブームが本格到来。今後、さらに新機種が充実していきそうだ。