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バイクのABSはなぜ義務化された?特徴や仕組み、メリット・デメリットを解説

バイクのABSは、安全走行に役立つ大事な装置です。日本国内では、2018年10月1日以降に発売される新型車などから、搭載が義務付けられるようになりました。欧州をはじめ、世界のバイクにABSが搭載される理由は、義務化までの歴史的背景や仕組みに注目すると理解しやすいでしょう。

今回は、バイクのABSの仕組みや特徴、歴史、義務化の背景、メリットと注意点などを詳しく解説していきます。

バイクのABSとは?

ABSとは、アンチロックブレーキシステムのことです。国土交通省では、ABSを以下のように定義しています。

  • 走行中の車両の制動に著しい支障を及ぼす車輪の回転運動の停止を有効に防止することができる装置

引用:国土交通省|「道路運送車両の保安基準」、「装置型式指定規則」、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」等の一部改正について

ABSをわかりやすく例えるならば、「ブレーキを強く握りすぎたときにタイヤのロックを防ぎ、安全かつ短い距離で停止することをサポートする装置」です。自動車だけでなくバイクにも、新しい車種を中心にABSが搭載されるようになりました。

ABSの歴史と義務化

ABSが最初に導入されたのは、鉄道分野です。車輪が「鉄」でできた鉄道車両の場合、ブレーキで車輪をロックしたときに、レールとの摩擦で振動や異音などのトラブルが発生する問題がありました。そのため、鉄道分野で初のABSは、ドイツのロバートボッシュ社が1936年に開発した車輪のロックを防ぐ目的の装置だったとされています。

1947年になると、イギリスのダンロップ社が飛行機用のABSを開発します。この時代のABSも、どちらかといえばブレーキ性能よりも車輪の損傷を防ぐ役割が大きく、動きも粗かったようです。

そして自動車においては、1969年にフォードのコンチネンタルマーク3、日本国内では日産プレジデントが最初のABS搭載車種になりました。バイクでは、1987年に登場したBMW・K100からABSが搭載されています。

バイクにおけるABSの義務化

世界のABSシステム開発を牽引するボッシュ社は、ABSを標準装備化することで、生命に関わるバイク事故のおよそ4分の1を防止できると発表しています。

こうした調査結果を鑑み、国土交通省が2015年1月に行なった「道路運送車両の保安基準」などの改正によって、日本国内でもバイクにABSの搭載が義務付けられるようになりました。

日本におけるABS義務付けのルールは、以下のように二輪車の排気量やタイプによって異なります。

  • 排気量125cc超の二輪自動車の場合:一定の技術的要件に適合したABSの装備
  • 50cc超~125ccクラスの原付二種の場合:一定の技術的要件に適合したABSまたはCBSの装備

ただし、50cc以下の原付一種やオフロード競技で使用されるトライアル車、エンデューロ車は、ABS義務付けの適用外です。

適用時期についても、以下のように車種によって異なります。

  • 新型車:2018年10月1日から
  • 継続生産車:2021年10月1日から

日本におけるバイクのABS義務化が遅れた要因

欧州では、ボッシュ社のような一流メーカーの主導もあり、2016年1月からバイクのABS搭載を義務付けています。一方で日本は、最も早い新型車でも2018年10月1日からとなるため、世界と比べるとだいぶおくれをとってのABS義務化となりました。

その理由は、流通車種の違いにあります。欧州の場合、もともと高額設定の大型バイクが多く流通していました。そのため、コスト面の問題が少なく、ABS搭載の義務化をスムーズに進められた背景があります。

一方の日本では、東南アジアや中国向けの安価なモデルから大型バイクまで、多彩な車種が流通しています。そのため、高額なパーツを用いるABSの導入により、採算がとれなくなる問題が懸念されていました。こうした要因から、欧州と比較してABS搭載の義務化が遅れたといわれています。

バイクのABSの構造と仕組み

バイクのABSの構造と仕組み

まずABSのないブレーキの場合、ブレーキハンドルを握るとマスターバックを通してマスターシリンダーが押され、油圧が発生します。その油圧がホースやブレーキパイプ、ブレーキピストンへと伝わり、ブレーキが利く仕組みです。

一方のABSは、まずセンサーの電気信号を使って車輪の回転速度を計測します。この情報をもとに、コントロールユニットが「タイヤの回転数」と「実際の速度」を監視し、両者の差が大きい場合に、タイヤがロックしていると判断をする仕組みです。

タイヤロックとみなされた場合、コントロールユニットが油圧をコントロールするABSモジュールに信号を出し、ブレーキのロックを解除します。そして、回転が戻ったタイミングで再び油圧をかけていきます。

ABSモジュールはブレーキのキャリパーとマスターシリンダーの間に位置し、コントロールユニットの司令で、人力で発生させていた油圧を逃す役割を果たしています。これら一連の動作により、ABS搭載のバイクは安全な停止が可能です。

バイクにABSを搭載する3つの効果とメリット

ABSが搭載されたバイクには、以下の効果やメリットがあります。

急ブレーキ時に転倒しづらくなる

ABSのないバイクに乗るライダーが危険などを察知し、急にブレーキを強く握りしめた場合を想定してみましょう。このとき、ブレーキの制動力がタイヤのグリップ力を超えると、ロックされたタイヤが路面を滑ってしまう現象が起こります。そうすると、タイヤが横方向の滑りに対するグリップ力を失い、転倒につながりやすくなるのです。

一方、ABS搭載のバイクでは、力いっぱいブレーキをかけてもタイヤのロックを防ぎ、自動のポンピングブレーキのように安全に減速ができます。したがって、ABSがないバイクよりも転倒しづらいといえるでしょう。

路面状況が悪くても止まりやすくなる

ABSがないバイクの場合、転倒しなかったとしても制動距離が伸びるのが一般的です。そのため、ブレーキを握っているのになかなか止まれないという事態が起こります。

また、砂利道や雨で濡れた路面を走っている場合も、制動距離は伸びやすくなります。ABS搭載のバイクであれば制動距離を短くでき、コンディションの悪い路面でも思い通りの位置で停止できるでしょう。

バイクの運転に集中しやすくなる

安全に停止でき、転倒しづらいABS搭載のバイクに乗れば、スロットルやハンドルといった他の操作に集中できるようになります。

それにより、疲労で集中力が低下しやすいロングツーリングやワインディングロードの走行でも、事故の発生リスクを抑えられるでしょう。バイクに慣れていない初心者にも安心です。

バイクにABSを搭載する場合の注意点(デメリット)

ABS搭載のバイクに乗る場合、以下の点をデメリットに感じることがあるでしょう。

バイクの値段が高くなる

2021年現在の日本では、ABSの義務化から3年ほどしか経っていないため、ABSセンサーやコントロールユニットはまだ高価な部品です。将来的に、パーツ量産の本格化が進む可能性はあるものの、現状では非搭載のバイクと比べて5万円ほど高額になります。

また、ABSは新しい車種への搭載が中心という点でも、購入時のコストが高くつく傾向にあります。安価に購入できるのは、まだまだ先と考えられるでしょう。

バイクが重くなる

ABSがついたバイクには、センサーやコントロールユニット、ABSモジュールが搭載されています。そのため、バイクの重量もABSの部品の分だけ重くなるのが一般的です。従来のものよりも軽量化は進んでいるものの、3kg~5kgの重量増になります。

「ABS搭載=絶対に安全」ではない

もちろんABSがついていても、100%安全というわけではありません。どれほど高性能なABSが搭載されていても、高速で走行していればバイクは止まりにくくなります。

安全運転のためには、ABSなどの機構だけに頼るのではなく、ライダー自身のブレーキワークやアクセルワークなども向上させる必要があるでしょう。

バイクのABSでよくある質問(Q&A)

安全な走行に不可欠なABSですが、搭載バイクの購入にあたり、さまざまな疑問が生じることもあるでしょう。バイクのABSについて、よくある質問とその答えを紹介します。

ABS搭載バイクにおけるブレーキ操作のコツは?

ABS搭載車のブレーキ操作の方法は、非搭載車と同じです。リアブレーキで車体を安定させてから、フロントブレーキを緩やかに握り込み、徐々に強めていくのが基本的なブレーキ操作です。

ABSの搭載により、緊急時は前後のブレーキレバーを一度に強く握りしめることができますが、急ブレーキをかければ車体は安定しづらくなります。身体が浮かないように足や腿で車体を挟み込む、強めのニーグリップを心がけるようにしてください。

ABS性能は車種によって差が生じるもの?

各バイクに搭載されているABSには、作動タイミングの設定や作動性に若干の違いがあります。例えば、高性能のABSが搭載されたバイクの場合、ブレーキをかけたときの制動距離が短く、キックバック振動の静粛性が高いのが一般的です。

また、最新バイクでは、コーナリングのバンク中でもABSの有効性が高まる「IMU」というセンサーを搭載したモデルも登場するようになりました。IMUが搭載されたバイクの場合、バンク中の横滑りに対してもABSが効果を発揮します。

ABSとCBSの違いは?

原付二種(50cc超~125cc以下)では、ABSではなくCBS(コンバインドブレーキシステム)が搭載されることもあります。国土交通省では、CBSを以下のように定義しています。

  • 複数の車輪の制動装置を単一の操作装置によって作動させることができる装置

引用:国土交通省|「道路運送車両の保安基準」、「装置型式指定規則」、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」等の一部改正について

CBSが搭載されたバイクの場合、運転に不慣れな初心者が後輪にのみブレーキをかけても、前・後輪にバランス良くブレーキがかかります。

一方でABSは、急ブレーキなどの際に車輪のロックを防ぐことで、転倒などを防ぐ機構です。スーパースポーツモデルなどには、ABSとCBSを組み合わせた機構(コンバインドABS)の搭載車種もあります。

ABSがついているかどうかの見分け方は?

ABS搭載バイクには、ホイールがロックされているかを検知するために、パルスセンサーとセンサーコードがついています。

パルスセンサーはブレーキキャリパー部分についているギザギザの網のような形をした部品で、センサーコードはキャリパー部分についています。街や店舗でバイクを見かけた際に、確認してみるとよいでしょう。

ABSは自分のバイクにあと付けできる?

ABSを取り付ける場合、以下のようにパーツを車体に設置する必要があります。

  • ECUにコントロールユニットを取り付ける
  • 前後ホイールとブレーキレバーにセンサーを取り付ける

メンテナンス上級者であれば、技術としてABSの取り付けは可能でしょう。しかし、パーツの金額やかかる時間・安全性を考慮すると、自分で取り付けるのは現実的ではありません。

中古車は、ABSがなくても違反にはならないものです。安全面は少し劣るにしろ、古いバイクにABSを無理に取り付けるのは避けたほうがよいでしょう。

ABSを自分のバイクから取り外せる?

ABS搭載バイクが登場したばかりの頃は、その性能の悪さから取り外すライダーも存在していました。しかしながら、現在のABSは性能が向上しており、新車にはABS搭載が義務付けられているため、わざわざ取り外す必要はないでしょう。

また、ABSセンサーはECUを介して作動しています。無理に取り外すことで他の機能が誤作動する可能性もあるため、ABSを外さないようにしましょう。

まとめ

ABS(アンチロックブレーキシステム)とは、バイクのブレーキを強く握りすぎたときにタイヤのロックを防ぎ、制動距離を短くしたり転倒をしづらくしたりする機構です。

生命に関わるバイク事故を減らし、より安全な走行ができるよう、日本では2018年10月1日以降に生産の新型車からABS装着が義務付けられました。継続生産車と型式指定を受けていない輸入車などは、2021年10月1日以降の生産分から適用されます。

ABSは、安全にバイクを楽しむうえで非常に大切な機構です。ABSやブレーキなどに不調がある場合は、信頼できるバイク専門店に早めの相談を行なうようにしてください。

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本記事は、2021年10月29日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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