マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

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    「やっべ! めっちゃ綺麗じゃん!」
    テツクニが興奮しながら感嘆を述べる。
    「うわぁ…やべ、人生観変わるわぁ」
    シロウも同じような感じ。
    「………」
    ミキタカに至っては言葉を失っていた。
    ちなみに俺も似たような感じ
    目の前に広がるのは水平線。
    この世のモノとは考えられない世界が広がっていた。
    ただただ心を奪われる

    「…また来ような」

    テツクニの言葉に全員頷く。
    振り返れば、4人の影が長く長く伸びている。
    信じていた。
    これからどんなことが起ころうともーー
    信じていた。
    4人でなら何だって出来るとーー
    信じていた。
    ……信じていたんだ……よ。

    「Thank You! みんなありがとな♪ また来るぜェ! アバヨ!」
    テツクニのシャウトに、会場がドッと盛り上がる!
    エフェクターの残響、ボルテージも冷めやらぬ中でバックへ帰って行く。
    「ーーお疲れ」「おう」「やっぱしんでぇな」「はぁ………」
    4人とも言葉を交わし、アフターケアを始める。
    目線は合わない。
    俺は慣れた手付きでベースをケースに納めて帰宅準備に入る。
    「じゃ、俺帰るわ」
    3人から言葉なき返事が返ってる。
    俺もそれ以上は何も言わず、扉を静かに閉じた。
    通路にロックが響く。間接照明の廊下をスタッフさんに会釈しながら帰っていく。
    てきぱきと動く彼らを、少し眩しく思う……
    「って、ヤバいヤバい」
    気が付けばいつの間にか駐車場に着いており、愛車を通りすぎようとしていた。
    タンデムステップに引っかけていたヘルメットを被り、愛車に火を入れる。
    駐車場にVツインのパルスが響く。
    「あぁ~、やっぱカッコ良いわぁ」
    愛車、SV650Xを眺めてうっとりする。
    しばしの暖気。
    そして次の目的地に向けてSVを走らせる。
    「………」
    この時間が好きだ。
    耳と肌でSVを楽しみながら心に貯まった諸々を洗い流していく。

    俺たち4人は高校の時に趣味だったバイクつながりでバンドを結成した。
    ボーカルはテツ、ギターはシロー、ベースは俺、ドラムはミッキー
    放課後にみんなで集まってはバイクとコピバンに明け暮れる。
    自惚れかもしれないが、、、
    バンドに限っては学生にしては上手かったんじゃないかと思う。
    そして、そんな時にインディーズに拾われてデビューした。
    難しい横文字の名前で、青臭いロックを歌い奏でて刻む。
    で、売れた。
    欲しかったバイクや車を躊躇なく買えるほどにね。
    酒も大人の遊びも経験した。
    もうね、筆舌に尽くしがたいほどに浮かれてたよ。
    俺たちの天下!誰も俺らを止めらんねぇってね。
    で。
    そんなことを数年続けたところで……

    「昨日未明、人気ロックバンド所属ーー本名○○テツクニ容疑者がーー」
    テツがクスリで捕まった。
    急転直下、俺たちをバッシングが襲う。
    世間に背骨が折れ曲がるほどに謝罪し、そして、ほとぼりが冷めたタイミングでテツに面会に行った。
    「……ごめん」
    すっかり人相の変わったテツに全員言葉を失った。
    ま、俺らも俺らで辛気臭い顔になってたんだけどね。

    「っと」
    俺はカフェの裏にSVを停める。
    「よう、みんな。お疲れさん」
    「あ、店長。お疲れ様です!」
    「店長。オーダーとドリンクお願いしていいですか?」
    俺はカフェの店長になっていた。
    学生時代から通っていた馴染みの店。
    「あいよ~」
    前掛けを着け、準備されていたコーヒーを煎れる。
    あれから10年。
    メジャーからは退いたものの、俺たちはバンドを続けていた。
    全員、サラリーマンなり俳優なり働きながら休日に集まりライブハウスに出させてもらう。
    細々とではあるが、ファンに支えてもらってバンドを続けることが出来ていた。
    「店長、ライブ見ましたよ」
    「やっぱベース上手いっすね」
    「ドリンクまだですぅ?」
    口々に飛んでくるバイト達の言葉攻めに四苦八苦。
    「はいはい。ういうい」
    コーヒーをカウンターに渡し、オーダーをさばく。
    テツはクスリを辞めた。そして、今は作詞家をやっている。
    バンドでは未だにボーカルだ。
    多少、劣化したかもしれんが……
    「良い声してんだよなぁ」
    「え? 店長何か言いました?」
    バイトが振り向く。
    「んにゃ。なんでも無いよ」
    バイトに愛想笑い。

    R~R~
    ポケットのスマホが振動する。
    見ればミキタカからメールが来ていた。
    どうやら次のライブは来月らしい。
    で、後は別件でーー
    「来週末にツーリングかぁ」
    最近やっと生活が落ち着いて、全員またバイクに乗れるようになった。
    「売れてた時はカメラが怖くて、まともに乗れんかったもんなぁ」
    思わず顔がにやける。
    目を閉じれば。
    あの水平線が昨日のことのように、まぶたの裏に浮かぶ。
    あの頃と今じゃ全然違うけどーー

    「あッ店長! パスタ! パスタ!」
    バイトの焦る声。
    「あ、おっ! やっべ!」
    見れば茹でていたパスタが泡を吹いていた。
    R~R~
    慌てふためく俺のポケットの中、スマホが再び振動する。

    ライブ。お疲れ
    またお前のベースを頼むぜ
    腹減ったから皆で今からカフェ行くわ
    サービスしろよな
    ーーPacific Inline4 Howling


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