
T
▼所有車種
-
- GPZ900R Ninja
北海道に住んでいます。
バイクブーム真っ只中の80年代に青春を過ごしたおかげでDNAレベルでバイク愛が刷り込まれました。
16才でRZ50に跨ってから現在までずーっとバイク乗り。
結婚、子育て、マイホームなど、バイクに対する脅威をことごとく乗り越え、時には死線をさまよいながらもバイクに乗り続けてきました。
GPZ900Rは心の友。我が翼。どんな時でも手放さず手元に置き続けて来ました(10年以上放置プレイだったのはナイショです)
基本的にカワサキ信者なのですが、カワサキしか乗らない訳ではありません。
よろしくお願いします。



「黒船 嘉永6年6月4日」※個人的Ninja考察
北海道はバイクシーズンもそろそろ終わり。すでに「冬眠」に入ったライダーも多いのでは?
金曜日に少しだけ時間があって、乗ったのはGPZ900Rでした。自分の中ではバイクの物差しのようになっており、ずいぶん偏った「基準」だと思うのだけど。初めて乗った大型バイクだから仕方がない。
このバイク、900ccの割には低速トルクは薄くて、発進時のクラッチミートには少し気を使う。
3000回転までは、エンジンに対する空気の充填が追いつかない印象で、スロットルに回転が着いて来ない。4000回転以上が本領発揮のエリアで6000回転以上は「カムに乗る」という表現をしたくなる、獰猛な回りっぷり。
この辺りのセッティングは、世界最速を狙った結果なんだろうと思わせるものがある。
エンジンの回り方なのだか、低回転では柔らかく、まるで空冷のような感覚。しかし、高回転ではそれなりにソリッドで硬い印象に変わる。パワーの出方は回せば回すほど力がみなぎる直線的なもの。
先に低回転は元気がない、と書いたが、まったく使い物にならないのか?と言えばそうでもなく、最低限のしつけはなされている。70〜80kmで流すと重くて長い車体がかもしだす安定感と相まってゆったりした気持ちでクルージングする事が出来る。
ハンドリングも独特で、基本は高速安定性を狙ったどっしりしたもので、高速域でのハンドリングはねっとりしたもので安心感を感じる。
では、低速の取り回しは重いのか、と言うとそんな事もなく、交差点の右左折レベルでも車体は軽く身をひるがえす。タイヤが細いという理由もあるのだが、ハンドリングにおける二律背反を高次元でバランスさせている。この辺りが日本のライダーに支持された理由のひとつだろう。
このバイクでハードに走ったあと、ゆっくりとクルージングする時、自分の脳内では「高中正義」の「黒船」が自動再生される。正確にはサディスティックミカバンドの「嘉永6年6月4日」というミディアムテンポのバラード曲なのだが‥。
少し歴史に詳しい人だと、「おいおい、ペリーの浦賀来襲は6月3日だろ」というツッコミが入るだろうが、曲名はこれで正解。サディスティックミカバンドの「黒船」は6月2・3・4日の組曲となっており、6月4日は後日譚的な曲となっている。西洋の力により強引に鎖国を解かれた日本が、新しい時代に向かう戸惑いと希望が込められている曲。
いささか強引ではあるが、このバイクはさしずめバイク界の黒船のようなものではないかと思う。
60年代末から、空冷多気筒エンジンで世界を席巻した日本のバイク達。
70年後半には性能的に行き詰まりを感じており、排気量の拡大で乗り切っていたが、ブレークスルーは必須だった。
その行き詰まりを果敢に突破したのがGPZ900Rだったのだろうと思う。
カワサキ初の水冷900c.cという新型バイクが、ライバルよりも小さな排気量にもかかわらず、市販車最速である250kmの壁を突破した時、バイクの歴史は転換点を迎えた。
Ninjaは国内発の黒船であって、日本史がその後、明治維新を迎えたように、バイク界は時速300kmを可能にする技術革新の時代を迎えた。
個人的に、明治維新後の日本は決して幸せな国にはならなかった、と思うのだが、バイク界はどうなのだろうね?