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バイクのブレーキキャリパーの清掃・メンテナンス方法

ブレーキキャリパーはあまり目立たないパーツですが、ブレーキにとって重要な役割を果たしています。そのため、適切にメンテナンスを行なわないと、ブレーキパッドの偏摩耗やベーパーロックなどの原因になる「引きずり」を起こすことも。

この記事では、ブレーキキャリパーの清掃・メンテナンス方法を解説します。メンテナンスが必要な理由やオーバーホールの方法などもお伝えするので、ブレーキキャリパーのメンテナンスを詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

ブレーキキャリパーの役割や仕組み

まず、ブレーキキャリパーとはどのようなものなのか、役割や仕組みを確認していきましょう。

ブレーキキャリパーは、ディスクブレーキで使われている部品の一部です。ブレーキレバーを握ってブレーキをかけると、握った量に応じて油圧が発生します。油圧はブレーキホースを通じてブレーキキャリパーへ。そして、キャリパー内で油圧によりピストンが押し出され、ブレーキパッドがブレーキディスクに押し当てられることで、ブレーキがかかります。これがディスクブレーキの仕組みです。

初期のディスクブレーキは、油圧ではなくワイヤーで作動する機械式もありましたが、現在では油圧式がほとんど。油圧式は、パスカルの原理によりブレーキ力が増幅されるため、軽い力でブレーキをかけられる点がメリットです。

ブレーキキャリパーのメンテナンスが必要な理由

ブレーキキャリパーのメンテナンスが必要な理由

ブレーキディスクとブレーキパッドの間隔は、一定に保たれています。ブレーキパッドが摩耗すると、ブレーキキャリパーのピストンが摩耗に応じて、せり出してくる仕組みです。このせり出した部分に、ブレーキパッドの摩耗したカスや砂ボコリなどの汚れが付着して、ピストンの動きが少しずつ悪化。

そして、ピストンの動きが悪くなると「引きずり」が発生しやすくなります。「引きずり」とはブレーキをかけていないときでも、軽くブレーキがかかった状態になってしまうことです。引きずりが起こると、ブレーキパッドの偏摩耗やベーパーロック、燃費の悪化などさまざまな悪影響があります。

引きずりが発生しているかどうかを確かめるには、エンジンをかけずにバイクを押し引きしてみてください。「キーキー」と音がする場合は、引きずりが発生している可能性が高いでしょう。

ブレーキキャリパーの定期的なメンテナンスが必要なのは、こうした引きずりなど不具合を予防するためです。

ブレーキキャリパーのメンテナンス方法

ブレーキキャリパーのメンテナンスは、自分で行なうこともできます。必要な道具や作業の手順を確認しましょう。

用意するもの

ブレーキキャリパーのメンテナンスには、以下のものが必要です。バイクショップやホームセンターなどで入手できます。

  • 歯ブラシ
  • 中性洗剤
  • ラバーグリス
  • パッドグリスまたはシリコングリス
  • ピストンツール
  • 通常のレンチ
  • トルクレンチ

ラバーグリスは、ピストンとピストン周りのゴム部分の接触面を、スムーズに動かすためのものです。一般的な潤滑剤はゴムを傷めるため、使用しないでください。

パッドグリスは、ブレーキパッドやパッドピンに使用します。ラバーグリスと異なり、ブレーキの鳴きやサビの防止が目的です。パッドグリスはシリコングリスでも代用可能。

ピストンツールは、ピストンの取り外しなどに使う道具です。メンテナンスではピストンの取り外しはしませんが、ピストンツールがあればピストンを楽に回せるため、清掃が楽になります。

レンチは通常のものに加えて、トルクレンチも用意しましょう。ブレーキキャリパー本体を取り付ける際は、規定トルクで取り付ける必要があるからです。

作業手順

具体的なメンテナンスの作業手順を説明します。

1.ブレーキキャリパーのマウントボルトを外して、キャリパー本体を外す

まず、ブレーキキャリパーを固定しているマウントボルトを外して、ブレーキキャリパー本体を外します。キャリパー本体を外す際の注意点は、キャリパー本体をまっすぐに取り外すこと。まっすぐ取り外ささないと、ディスクローターが曲がってしまう可能性があります。なお、メンテナンスだけであれば、ブレーキホースはつなげたままで大丈夫です。

2.パッドピンとパッドスプリング、ブレーキパッドを外す

ブレーキキャリパー本体を取り外したら、パッドピン・パッドスプリングを取り外します。取り外したときに、パッドピンやパッドスプリングに偏摩耗がないか、確認しておきましょう。偏摩耗がある場合は、交換が必要です。

パッドピンとパッドスプリングを外したら、ブレーキパッドも外します。取り外したブレーキパッドに、マジックなどで外側・内側の印を付けておけば、取り付けの際に迷いません。

3.ブレーキを握ってピストンを露出

ブレーキパッドを取り外したら、ブレーキを握ってピストンを露出させます。マルチピストンの場合は、ピストンが2個とも同じくらいに露出するようにしてください。片方が出すぎてしまった場合は、出すぎたほうをタイヤレバーや板などで押さえておくとよいでしょう。なお、ブレーキを握りすぎると、ピストンが抜け落ちるため注意してください。ピストンの外周にサビがあった場合は、オーバーホールが必要です。

4.水道水と中性洗剤でピストン周辺を歯ブラシで磨く

露出したピストンを、水道水と中性洗剤を使って歯ブラシで磨きます。ピストンツールを使ってピストンを回してやれば、楽に全体を磨けるでしょう。ピストンをプライヤーなどでつかんで回すと、ピストンに傷が付いてブレーキフルードが漏れる原因になるので、やめてください。

汚れが落ちにくい場合は、水の代わりにぬるま湯と中性洗剤で洗うと汚れが落ちやすくなります。また、洗剤の代わりにパーツクリーナーを使っても良いのですが、パーツクリーナーを使う場合は、ゴムを侵さないタイプのものにしてください。

5.水分を取り除く

ピストンの汚れを落としたあとは、エアーやウエスを使ってしっかりと水分を取り除きましょう。水分が残っているとピストンがサビてしまい、オーバーホールしなければならなくなります。

6.ピストンの根元部分にラバーグリスを薄く塗布

ピストンとシールゴムの動きを滑らかにするため、ピストンの根元部分にラバーグリスを薄く塗ります。塗りすぎると汚れが付きやすくなってしまうため、薄く塗るのがコツです。

7.ピストンをなじませる

ピストンにラバーグリスを塗ったら、グリスをなじませます。

  • ピストンを指で押し戻す
  • ブレーキレバーを握ってピストンを露出させる

ピストンが滑らかに動くようになるまで、この動作を繰り返してください。

8.ブレーキパッドの裏やパッドピンにパッドグリスを塗る

ピストンにグリスがなじんだら、今度はブレーキパッドの裏やパッドピンにパッドグリスを塗ります。パッドグリスを塗るのは、ブレーキの鳴き防止とサビ防止のためです。パッドグリスの代わりに、シリコングリスを使うこともできます。

9.ブレーキパッド、パッドスプリング、パッドピンを元に戻す

取り外したときと逆の手順で、ブレーキパッド・パッドスプリング・パッドピンを戻していきます。パッドスプリングは取り付けの方向が決まっているため、注意してください。また、パッドピンの戻し忘れにも十分気を付けましょう。

10.キャリパー本体を元に戻す

パッドピンなどを戻したら、ブレーキキャリパー本体を元に戻します。キャリパー本体のマウントボルトは、必ず既定トルクで締めつけてください。既定トルクは、バイクのサービスマニュアルなどで確認できます。

取り付けが終わったら、必ず何度かブレーキレバーを引いて、ピストンを押し出してください。この作業をしないと、ブレーキが機能しません。念のため押し引きをしてみて、実際にブレーキが利くかどうかを確認しておきましょう。

ブレーキキャリパーのオーバーホール

ブレーキピストンのシール部分からフルードが漏れている場合や、ピストン周辺にサビや激しい汚れがある場合は、軽度のメンテナンスではなく、オーバーホールが必要です。

ここでは、ブレーキキャリパーのオーバーホールに必要なものや作業手順を説明します。ただし、ブレーキキャリパーのオーバーホールは、組み付けなどに失敗すると重大な事故が起きる可能性があるため、メンテナンスによほど自信がある場合以外はおすすめしません。

必要なもの

ブレーキキャリパーのオーバーホールには、メンテナンスに必要なものに加えて次のものが必要です。

  • 潤滑剤
  • 研磨剤
  • ピックアップツール
  • 溝トール
  • 新品のオイルシール・ダストシール

潤滑剤は、ピストンが動きにくい場合に使います。ピストン周りにはゴムが使われているため、ゴムを侵さない潤滑剤を用意しましょう。メタルラバーはゴムを侵しませんが、鉱物油・シリコン系のブレーキフルードを使用しているブレーキには使えないため、注意が必要です。

研磨剤は「ピカール」など、一般的なものを用意します。

ピックアップツールは、オイルシールやダストシールを取り外す際に便利です。また、「溝トール」があれば、オイルシール・ダストシールの溝を掃除が楽になります。

その他、各種ボルトやピストンなども、状態に応じて新品に交換してください。

作業手順

ブレーキキャリパーの、オーバーホールを行なう手順を説明します。ブレーキパッドの取り外しまでは、メンテナンスと同じです。先述のメンテナンスの1、2を参考にしてください。

1.ブレーキキャリパーをゆるめる

キャリパーを固定しているボルトをゆるめます。ボルトがサビている場合は交換しましょう。

2.ピストンを取り外す

ピストンツールを使ってピストンを取り外します。ピストンに傷が付いてしまうため、プライヤーなどで無理矢理ピストンを引き抜かないようにしてください。ピストンが動きにくい場合は、潤滑剤を少しだけ吹きかけるとよいでしょう。

取り外したピストンにサビや傷がある場合は、新品に交換します。

3.ピストンを研磨材で磨く

ピストンの汚れを落として、研磨材でピストンを磨きます。表面を傷付けないように気を付けてください。

4.キャリパー内のオイルシール、ダストシールを取り外す

キャリパー内に残っている、オイルシール、ダストシールをピックアップツールで取り外します。

5.シール溝の汚れを取る

オイルシール、ダストシールがセットされていたシール溝にたまった汚れを取り除きます。溝用の専用ツールを使えば、スムーズに清掃可能です。

6.新品のオイルシール、ダストシールを取り付ける

オイルシール、ダストシールはゴム製のため、オーバーホールの際は新品に交換します。セット前には、ラバーグリスを薄く塗っておくのがコツです。

7.ピストンにラバーグリスを塗り、取り付ける

ピストンもラバーグリスを塗って取り付けます。メンテナンスの6、7を参考にしてください

8.ブレーキキャリパーを元に戻す

取り外しと逆の手順でブレーキキャリパー組み直して、元に戻します。メンテナンスの8以降を参考にしてください。

ブレーキキャリパーのメンテナンスをプロに依頼した場合

ブレーキキャリパーのメンテナンスは、キャリパーの清掃程度であれば自分で行なうことも可能です。しかし、ブレーキは安全に直結する部品であるだけに、自信がない場合はプロに任せましょう。特にオーバーホールは、よほど自信がある場合以外はおすすめしません。

ブレーキキャリパーのオーバーホールを、バイクショップに任せた場合の工賃としては、5,000~1万6,200円が目安です。

グーバイクでは全国約2,000の加盟店のなかから、お近くのバイクショップを探せます。作業実績や工賃の目安などもわかるので、下記リンクから一度お試しください。

ブレーキキャリパーの作業実績一覧

まとめ

ブレーキキャリパーは油圧式ディスクブレーキにおいて、ブレーキパッドを押し出す重要な役割を担っています。安全走行に関わる重要な部品のため、定期的なメンテナンスが欠かせません。

清掃程度のメンテナンスであれば自分で行なうことも可能ですが、ピストンにサビがある場合などは、オーバーホールが必要です。オーバーホールはプロに任せた方が無難でしょう。

本記事は、2022年3月7日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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