昨年秋、S1000XRが発表されたとき、この新型モデルには、それほど関心を持てなかった。スタイルはアドベンチャー系に見えるものの、すでにBMWはアドベンチャー系として、5台のGSをラインナップに揃えている。そこに新車を投入する必然性が、感じられなかったのだ。
だが、実際にXRに乗った僕は、なるほど、そうだったのかと思った。端的に言うとこのモデルは、BMWのアドベンチャー系ラインナップを拡大するためではなく、Sシリーズの裾野を広げるために生まれたのだ。
アルミツインスパーフレームと水冷4気筒エンジンの基本設計を、スーパースポーツ/スポーツネイキッドのS1000RR/Rと共有しているのだから、それはまあ当然のことなのだが、このジャンルにSシリーズ的な速さとスポーティさを求める人にとって、XRは相当に魅力的な存在になるだろう。
ちなみに、S1000RR/Rが“飛ばしてナンボ”と言うべきキャラクターに仕上げられているのに対して、XRにはツーリングや市街地での使用を考慮した柔軟性が備わっている。その背景にあるのは、GSシリーズで培ったノウハウだ。具体的には車体寸法やライポジなどにGSシリーズの手法を投入することで、XRは兄弟車とは一線を画する特性を獲得しているのである。
快適性や汎用性の高さでは、GSシリーズに一歩譲るものの、S1000RR/RとGSが融合したXRは、BMWにとって新ジャンルを開拓する第一号車なのだ。
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