基本設計を共有するモデルでありながら、F700GSとF800GSは、乗り味が相当に異なるモデルである。もっとも世間でよく言われている、700:オンロード寄り/エントリーユーザー向け、800:オフロード寄り/エキスパート向けという解釈に対しては、僕は100%の同意はしていない。ベテランの中でも700の軽快さと親しみやすさを高く評価する人は数多く存在するし、800の刺激的なエンジン特性と悪路走破性は、オンロードでも十分なメリットになるのだから。
というわけで、この2台に明確な甲乙は付けられないのだが、今回の試乗で久しぶりに800をじっくり体感した今現在の僕は、800特有の“男気”に感心しているのだった。近年のミドルアドベンチャーツアラーの多くが、親しみやすさとコスト抑制を念頭に置いているのに対して、21インチの前輪やストロークが200mm以上の前後サスペンション(ローダウン仕様でも前後190mm!)、高荷重を前提に設計された倒立フォーク+頑強なステムなどを採用するF800GSに、世間の潮流に従おうという気配がほとんど感じられないのだ。言ってみればこのモデルからは、作り手の意気込みがヒシヒシと伝わって来て、僕はその事実がすごく嬉しかったのである。
なお2016年型で外装類を中心としたマイナーチェンジを受けたF700/800GSは、すでに2017年型で電子制御システムやマフラーなどを刷新することが公表されているものの、2017年型で行われる仕様変更の主な目的はユーロ4規制への対応のようで、基本的な特性に大きな変更はないようだ。
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