イタリアンスクーターの代名詞であるベスパブランドに、第一号が誕生したのは1946年のことだ。現在では高いファッション性を持つプレミアムスクーターとして知られるベスパブランドが、60年以上に渡って世界中で愛されている理由のひとつには、工業製品としての高い完成度が挙げられる。
フレームと外装をスチールで一体化させたスチールモノコックボディ、片持ち式の前輪懸架方式、後輪を包み込むヒップライン。現行ベスパの最高峰モデルとなるGTS300i.e.スーパースポーツにも、60年以上に渡って引き継がれてきたこれらのディティールが息づくのは、スクーターというパッケージングにおいて、初代モデルの基本設計がいかに優れていたかを裏付けるものと言えるだろう。“ベスパ”として見ると大柄な車体だが、低速域でも中速域でも右へ左へとバイク的な動きをも許容する軽快感は、他のビッグスクーターにはない持ち味のひとつ。片持ちの前輪に不安を覚えるかもしれないが、3ケタの速度域で深くリーンしない限り、不安な挙動はなく、日常領域ではまず問題ない。
278ccのエンジンはシリーズ最大排気量だけあって、80km/hまでの加速は一気。スロットルのツキも良く、シグナルGPで先頭を奪うのも容易なほどだ。エンジンは単気筒ながら低速域でも不快な振動はなく、回すほど滑らかになるため、高速道路でも100km/h付近で巡航するのであれば快適だ。
その名に恥じない走りと、唯一無二の存在感。刺激ある日常を求めるならこんな相棒も悪くない。
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