バイクもクルマも、デビュー時にいくら多くの好評を得ようが、月日が流れ周囲の技術が進めば、相対的に古くなる。そこで、いかに本来の持ち味を崩すことなく、全てを刷新させるか。数多くの名車がモデルチェンジの際に直面してきた問題でもある。
その問題に対してMVアグスタがブルターレで採った手法は『キープコンセプトに拘りながらも全てを見直す』というものであった。実際、ニューブルターレの外観は、従来型とさほど変わりがない。でも、全パーツの85%が新設計されているのだ。
そんなブルターレの持ち味は、日常域で元気一杯のマシンを、使い倒せるところにあったと思う。
イタリア語で獰猛という意味を持つネーミングにもそんな意図が込められている。ただし、獰猛であることは、いっぽうでアクの強さに繋がりかねない。その意味で、格段に扱いやすくなったニューブルターレにアクの強さはない。だが、スポーツ性という意味では、従来型とはもはや比べるべくもない。
見事なまでに淀みないトルク特性を実現したエンジンは、性能を広範囲に引き出しやすいものとなっており、スロットルレスポンスもスムーズかつ従順。実に扱いやすい。加えて、新採用のトラクションコントロールシステムが、路面に安定してトラクションを伝えてくれる。
ホイールベースが28mm長く、キャスター角が0.5度寝かされた車体によって、ハンドリングにも気難しさはなく、素直で扱いやすい。
もちろん、街乗りに順応できるものであっても、照準はあくまでもスポーツ。サスペンションはサーキット走行にも耐えられる高荷重設定で、ある程度、攻めることで良さが見えてくることも事実である。
しかし、エンジンにバランサー軸が設けられ、車体の振動対策も万全となったニューブルターレは、一般道のライディングも快適。ライポジにも窮屈さがなく、身体の動きが規制されることがない。タダモノではない街乗りバイクの再デビューである。
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