バンディット1250Fは、これまで日本、ヨーロッパで人気だったバンディット1250をベースにフルカウルを装備したモデルである。なんだ、それだけかと思うかもしれないが、これが驚く程にいい。カウルをつけたことで、ウインドプロテクション効果が高くなっただけでなく、ステアリングの動きを妨げるメーターやライトといった重量物がフレームに取り付けられたことで、極めて自然なハンドリングを実現しているのだ。
水冷の4気筒エンジンは、低回転から太いトルクを発生し、どんな速度からでも自由自在にマシンを加速させる。高回転まで引っ張れば、これぞリッターマシンという豪快なパワーを発揮する。多くのファンに惜しまれながら排ガス規制で姿を消した、スズキ油冷エンジンの迫力あるフィーリングと走りを、見事に再現しているのである。
それでいて、バンディット本来の安定感ある素直なハンドリングは、すべての速度域で健在。低速ではさすがに前の方が重く、フロントタイヤに負担がかかっているような感じも受けるが、マシンの動き自体はシャープだから、ジムカーナのような走り方でも、大きな車体は自在に動いてくれる。
また、超高速のテストコースとして有名な竜洋を全開で走っても、不満はまったくなし。最高速付近では、ピタッと安定し、コーナーリングでキッカケを作ってやれば、一気にマシンがバンクしていく。バンク角も深く、エキスパートライダーが、本気でタイムアタックをしても問題はない。標準装備されているABSも、サーキットからウエット路面まで、常に安定した制動力を確保してくれる。まったくもって、どこに欠点があるのか、探すのが難しいほどに良くできたマシンなのである。
何人かの読者は、表現がオーバーだと思うかもしれない。しかし、実際に試乗してみれば、走り出した瞬間に自分の手足のように馴染み、ビッグバイクを操る喜びを教えてくれるマシンだということが分かるはずだ。
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