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| ハンターカブの燃料サブタンク装備で、旅仕様のカスタムが自慢のエル子。燃費よし、小まわりよし。軽量スリムで、小柄なライダーにもかなりオススメ。
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わたくしゴトで恐縮です。わが愛しの相棒、ホンダXL230が走行距離2万キロを刻みました。3年で2万キロ。大きな相棒がもう一台いるもので、とりわけ大した距離ではないけれど、北は北海道から南は鹿児島まで、方々をいっしょに旅したものです。軽くて、丈夫で、可愛くて、山の中にも穏やかなリズムでいざなってくれる。バイク旅の本当の気ままさを教えてくれたコイツと、またメモリアルな旅がしたくて、ぽっかり空いた休日にツーリングに出ることにしました。あ、相棒の名はエル子。どうぞよろしく!
さて、お祝いの旅である。日本人たるもの、お祝いと言えばお寿司なのである。でもありふれたお寿司ではダメ。メモリアルなんだから。そこで思い出した。千葉県の鴨川に、元祖焼き寿司の店があることを! 雑誌でしか見たことの
ないあこがれのお寿司。こんがり焼き色が付いたのを、そおっと箸でつまんで、口に運んだら魚の脂身がジュワッ……。はぁ、想像しただけでとろけちゃう。さぁエル子、南房総まで走るわよ!
東京人の私にとって、南房総までのアクセス方法はいくつかある。東関東自動車道から館山自動車道に入るルートと、直線天国のアクアラインで一気に東京湾を横断するルート。でも今日は、第三京浜、横浜新道、横浜横須賀道路と走り継いで、千葉とは反対側の神奈川県へ。横須賀の久里浜港から出る東京湾フェリーに乗って内房に渡り、旅情を盛り上げようという作戦だ。青い空。広い海。ギラギラの太陽。肌にまとわりつく潮風。夏だね、気分そう快!
でも、客室からの視線がチクチク痛い。女ひとりのフェリー旅。これを世間一般では演歌の世界というらしい。いくら本人は楽しくても。うぅ……負けないっ!
対岸にぼんやりと浮かんでいた房総半島が、少しずつ近づいてくる。街並みがにぎやかだった横須賀とは対照的に、低くなだらかな緑色の山並みがモコモコと広がっている。その中に、ギザギザしたりょう線を描く変わった山がひとつ。よし、まずはあそこに登ろう!
潮風にかき乱された髪を手早くひとつにまとめて、エル子の待つ車両甲板へ。真夏の房総旅、スタート!
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久里浜港から金谷港までの所要時間は約40分。これより短いとあっけなく、これ以上かかると少し退屈。ちょうどいい長さなのだ。
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| 空を舞うトンビを見下ろすこの高さ。天下取ったり! 鋸山の頂上から眺める東京湾はとても穏やか。下界よりひんやりした風が気持ちいい。 |
港を出て、国道127号を南に流れ込めば、鋸山ロープウェイ乗り場はすぐそこだ。鋸山道路もあるのだけど、残念ながらオートバイは通行禁止。ごめんエル子、行ってくる。山麓駅にバイクを置いて、昔ながらの厚紙切符を片手にロープウェイに乗り込んだ。
さっきまで「早く乗ってください」「はいはい、写真は後にして」と無愛想だった係りのオバサンが、ロープウェイに乗り込み、ピシャリとドアを閉めてマイクを握り締めた途端、3オクターブくらい高い声でガイドを始めた。「みなさま〜このたびは〜ご利用誠に〜ありがとうございまぁす」
おいおい……、と心の中でツッコみを入れながら聞いていると、鋸山は、建築材に適した凝灰岩でできていて、江戸時代から採石が盛んに行われていたため、露出した岩部分が鋸の歯のように見えることからこの名前がついたんだそうだ。南房総国定公園に指定されており、史跡も豊富。頂上からは、さっき渡ってきた浦賀水路の向こうに、三浦半島、富士山や伊豆大島、横浜のランドマークタワーまでも見渡せると言うけれど……。
まさしく! 眼下に広がったのは、視界に納まらないほどの大パノラマ。しかし感動もつかの間、気になるものを発見してしまった。展望台の片隅にたたずむ、神様を祭ったような小屋。「竜悦庵」と書かれたその中をのぞくと、鈴と、おみくじの機械と、あらまぁ! 男根の形をした木と、うっすら汚れたビーナス像。取ってつけたようなエロスに思わずニタニタ。どうやら性神信仰ということらしい。そうなると気になるのはおみくじの中身だ。100円を投入すると、出てきたのは中吉。なになに? フフ。ムフフ。なるほど。え? 気になる? それはもう、あなたも引いてみるしかないですよ。
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じつは生まれてこのかた、おみくじを引いたことがありません。性神の前でデビューだなんて。まぁ、初体験に相応しいってことで、アハ。
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中吉のご利益ってこの程度? 汗だくになってようやく探し当てた林道はあいにく閉鎖中。もう、やけ酒ならぬやけポカリ。夏のツーリングは水分補給をお忘れなく。
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さてエル子、お待たせしました。焼き寿司を目指して突っ走ろう!南房総を横断する県道34号、別名長狭街道を名前の通りウネウネと走り、東京から一番近い千枚田"として隠れた名所の大山千枚田に寄り道をしてから、鴨川へ。お目当ての寿司屋「笹元」は国道128号沿い。すぐに見つかった。
のれんをくぐると、名物寿司職人元さん"が「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれた。並んで忙しそうに動いているのが、娘の咲樹さん。親子そろってバイク乗りだ。
元さんが寿司を焼くことを思いついたのは今から15年前。そのころ世の中にはまだ焼き寿司という言葉がなかったそうだ。2万キロ記念に相応しくおまかせ"というメニューを頼むと、目にもおいしいお寿司8かんが、元さんお手製の陶器に載って運ばれてきた。
「焼きたてをすぐに食べて」
と言われて、焦げ目のついたクロムツを慌てて口に放り込む。ジュワッ。わさびの代わりに添えられた粒マスタードが意外にもベストマッチ。このおいしさでこのボリュームが3000円代!? やられました。幸せの絶頂です。もう、クロムツも私も、とろけました〜。
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