フロントタイヤの交換で入庫いただきましたホンダCB350FOURです。 1972年販売の4気筒モデルです。 1気筒あたり87cc程度の排気量が4連装で、マフラーもそれぞれ独立管。 そのエキゾーストノートは他に類を見ないものですが、この世代の車両だとノーマルの奇麗なマフラーを装着した個体は希少です。 でもこちらの車両は奇麗なノーマルマフラーが装着されています。 そんな良好なコンディションの旧車です。

リアタイヤは半年前に交換済み。 今回はフロントタイヤの交換です。 チョイスしたのは交換前と同じ銘柄となるダンロップTT100GP 50年以上の歴史を持つシリーズのタイヤです。 イギリスのマン島TTレースで史上初の平均ラップ速度100マイルを達成したことを記念して名付けられたTT100 多くの欧州車の標準タイヤに指定され、世界中のスポーツライダーやレーサーからの支持を受けたスポーツタイヤの代名詞です。 当時のタイヤパターンをそのまま踏襲しながら、その時々の最新の技術を投入されてきたタイヤで、80年代にはハイグリップコンパウンドを採用しTT100GPに名称を変更。 バイアスのスポーツタイヤとしては定番中の定番タイヤです。 現在ではラジアルタイヤもTT100シリーズには仲間入り。 その魅力はやはりビンテージ感溢れるタイヤパターンと、それでいて最新のグリップを発揮する技術が投入されているということでしょう。 ネイキッドモデルにとてもよく似合うスポーツタイヤです。

CB350FOURは前後ともスポークホイールです（この当時はそれが当たり前） 当然ながら通常はタイヤ内部にチューブが入っています（この当時はそれが当たり前） 自転車と同じですね。 なので釘などの異物がタイヤを貫通し、内部のチューブを破損させるとすぐに空気が抜けます。 こちらのCB350FOURもスポークホイールなのですが、チューブレス加工を施しています。 ホイール内部に専用のテープでスポークニップル部分（スポークホイールのホイールに刺さっている部分）を目張りします。 ただのテープではなく、どちらかと言えばブチルテープのような厚みと弾力のあるテープで時間が経過すると硬化します。 これによってスポークホイールでもチューブレス化ができるのです。

もともとチューブを挿入することが前提のホイールはリム部が薄く出来ています。 チューブレスの場合、このリムとタイヤのビード部（タイヤのへり）を空気圧でしっかり押し付けて密着させる必要があります。 その為、チューブレス用のホイールはリム部が厚いのですが、スポークホイールなどの場合は薄いので密着性が低下しやすいのです。 ちゃんと空気圧が維持されていれば良いのですが、空気圧が減るとここから空気が漏れ出し簡単にホイールからタイヤが外れます（ビードが落ちます） その為、タイヤの空気圧管理はこまめに行う必要があります。 面倒だと思われるかもしれませんが、それ以上のメリットもあります。

いろいろありますが一番はパンクしてしまったときの差です。 チューブの場合は異物が貫通するとすぐに空気が抜けますが、チューブレスだとすぐには抜けません。 チューブレスタイヤの場合、チューブがありませんのでタイヤ自体が空気漏れを抑える必要があり、インナーライナーと言われる空気漏れを抑える柔らかいフィルムのような幕があるのです。 このおかげで釘などの異物がささっても、その穴を塞ぐ効果のおかげで空気は一気には抜けません。 徐々に空気が抜けるだけなのでパンク修理できるバイクショップやガソリンスタンドまでゆっくり自走することができます。

バイクが走行中にフラついたり、停車した時の押し引きでいつもより重く感じるなどのパンクの症状があらわれたとき、チューブタイプのタイヤはまたたくまに空気圧が低下し走れる状況ではなくなります。 たいへん危険ですね。 でもチューブレスならそう言うことがないのです。 あくまでも空気が一気に抜けないということでないので、チューブレスタイヤも空気圧の点検を定期的に行うのは言うまでもありません。 高速道路を走っているときにパンクしたら…重量級のオートバイだったら… チューブタイヤだと怖いですね。

今回のタイヤ交換時にはあらためてチューブレス加工した個所の異常はないかを点検。 タイヤを組んだらバランス調整を行い、ホイールを車両の装着すれば作業完了です。 タイヤ交換はもちろん、チューブレス化のご相談もお気軽にどうぞ！